2022年6月29日 [オリジナル4コマ]

柘植文の編集部かんさつ日記 第686話「よろしくお願いします」

(次回は7月6日更新です)

2022年6月22日 [オリジナル4コマ]

柘植文の編集部かんさつ日記 第685話「6畳一間ではムリそう」

(次回は6月29日更新です)

2022年6月15日 [オリジナル4コマ]

柘植文の編集部かんさつ日記 第684話「健康」

(次回は6月22日更新です)

かんさつ日記第672話を読む

2022年6月8日 [オリジナル4コマ]

柘植文の編集部かんさつ日記 第683話「白黒」

(次回は6月15日更新です)

2022年6月1日 [オリジナル4コマ]

柘植文の編集部かんさつ日記 第682話「何着だかわかりませんがほぼ完売したそうです」

(次回は6月8日更新です)

2022年6月1日 [施川ユウキ映画コラム]

施川ユウキ映画コラム「全ての映画は、ながしかく」
第19回 インセプション

第19回 インセプション

映画のグッズを集める趣味はないが、ひとつだけ手にして嬉しかった小物がある。昔、『インセプション』の試写会へ行った際にもらった小さな金属製のコマだ。作中ではトーテムと呼ばれている。ディカプリオ演じるコブが肌身離さず持っているアイテムで、夢と現実を区別するために回される。コマがずっと回り続ければ夢、止まって倒れたら現実だ。映画のラスト、ミッションを終えたコブは家路に着くとテーブルの上でトーテムを回す。そして結果を見ずに家族の元へ向かう。トーテムが倒れたかどうかは、観客にもわからない。素晴らしい幕切れだった。
夢といえば、大阪で風呂なしの部屋に暮らしていた時、印象的な夢を見た。大ヒット漫画家になった自分が東京の高級マンションの仕事部屋で佇んでいる。白い壁に出窓があって長机が置いてあり、その前に立って夜景を眺めている。二十歳頃の自分の、チープなサクセス願望がそのまま形になっている夢だ。
『インセプション』を観た当時住んでいたのは、大阪時代と大して変わらない亀有のワンルームだった。コタツの上でトーテムを回す。「上京して漫画で飯が食えて、好きな映画の試写にも仕事で行ける。あの時見た夢の風景とは違うが、これも夢かもしれない」そんなことを考えている内にトーテムは止まる。
それから12年。数回の引っ越しを経て、いつの間にかトーテムを紛失してしまった。最近、急に欲しくなりネットで探してみた。普通に売っていたのだが、商品画像をよく見ると、コマの裏側に「INCEPTION」と印字されている。意味がわからない。映画の中でコブが回しているトーテムには「INCEPTION」などと書かれていない。書かれているわけがない。僕は、作品の世界に憧れているのであって、関連グッズが欲しいわけではない。子供の頃、悟空やクリリンが着ていた亀仙流の道着を欲しいと思ったことはあったが、キャラがプリントされたパジャマは絶対に着たくなかった。それは作品世界の外側にある物で、『ドラゴンボール』の世界からは最も遠い。「INCEPTION」と印字されたコマは『インセプション』の世界から最も遠いのだ。
好きな作品の世界に登場するアイテムであればなんでもいいわけでもない。例えばジェームズ・ボンドがかけていたトムフォードのサングラスが欲しいとかは思わない。単なる現実世界の商品だ。ワクワクがない。
色々考えると、試写でもらったシンプルなトーテムは完璧だった。作中と同じく、現実世界で回すとちゃんと止まる。そして夢の世界だったら永遠に回り続けるかもしれない、そう信じることができるのだ。
今僕が住んでいる部屋は、もちろん高級マンションではないし、窓から夜景も見えない。ただ白い壁に出窓があって、そこに小さな長机を置いている。仕事場の一角だけは、あの時見た夢と同じだ。長机の前に立ち、僕は失くしたトーテムを思い出す。
もしかしたら、今もどこかで回り続けているのかもしれない。

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