2022年7月1日 [施川ユウキ映画コラム]

施川ユウキ映画コラム「全ての映画は、ながしかく」
第20回 映画と小旅行

第20回 映画と小旅行

先日、大洗へ小旅行に行った。大洗と言えばガルパンだが、聖地巡礼が目的じゃない。きっかけは『ゴーストライター』というサスペンス映画だ。主人公のライターが海辺の別荘で執筆する場面があって、曇天と寂しげなロケーションが印象的だった。「こういう場所で仕事とか読書して過ごしたい」と当時思い、十年以上経った今もぼんやり思っていて、似た雰囲気を持つオーシャンビューの旅館を探し、泊まりに行くことにした。

ちょっと高めの宿だが、広いテラスがあってすぐ目の前に海が広がっている。リゾート的な砂浜ではなく、岩の多い海岸線。波が岩にぶつかるたび荒々しく白い飛沫が舞う。映画と同じ曇った日で、春だけど海風が冷たい。荒涼とした海だ。永遠に見ていられる。

テラスのテーブルに、持ってきた本を置く。終末物のSFと古いミステリと海外古典文学。いずれも特別な場所で読みたかった小説だ。時間帯的に肌寒く、集中できなさそうだ。ひとまずスマホを開くとKindleが期間限定のセール中だった。『コンテナ物語』を半額で買う。小説ではないが前から読みたかった本だ。コンテナというシステムがいかに世界の流通を変えグローバリーゼーションを実現させたのか描いたノンフィクション。帯でビル・ゲイツが推薦している。テラスの雰囲気には合わないが面白い。読みながら何年か前に観た映画のワンシーンを思い出す。アクション大作のクライマックスで、巨大なコンテナが空から大量に降ってくる。何の映画だったか思い出せない。その場面以外の内容もわからない。『トランスフォーマー/ロストエイジ』だったかもしれない。ネットフリックスにあったので確認してみる。確かにコンテナは降ってくるが何か違う。色々ググると『特攻野郎Aチーム THE MOVIE』がそれっぽい。ディズニープラスにあったのでクライマックスだけ観る。これだ。ひと昔前の映画だからか、記憶の中よりもCGがしょぼい。スマホを持つ手が冷たくなってきて、部屋に戻った。ヒーター横のソファに寝そべり、特攻野郎Aチームのウィキペディアを流し読みする。満足してTwitterを開くと、アカデミー賞会場でウィル・スミスがビンタした事件について盛り上がっていた。ぼんやりとタイムラインを眺める。気がつくと一日が経っていて、チェックアウトの時間になっていた。

本は一度も開いていないし、Kindleの『コンテナ物語』も第一章しか読んでいない。そういえば仕事の道具も持ってきていたがすっかり忘れていた。ウィル・スミスの話題をひたすらネットで追っていただけだ。やっていることは自宅と変わらない。

ただ海岸の寂しげな景色は素晴らしく、海を見たくなったらまたここに来たいと思った。映画で見たワンシーンがここへ連れてきてくれたのは確かだ。『ゴーストライター』がどんな話だったのか、全く覚えていない。

2022年6月29日 [オリジナル4コマ]

柘植文の編集部かんさつ日記 第686話「よろしくお願いします」

(次回は7月6日更新です)

2022年6月22日 [オリジナル4コマ]

柘植文の編集部かんさつ日記 第685話「6畳一間ではムリそう」

(次回は6月29日更新です)

2022年6月15日 [オリジナル4コマ]

柘植文の編集部かんさつ日記 第684話「健康」

(次回は6月22日更新です)

かんさつ日記第672話を読む

2022年6月8日 [オリジナル4コマ]

柘植文の編集部かんさつ日記 第683話「白黒」

(次回は6月15日更新です)

2022年6月1日 [オリジナル4コマ]

柘植文の編集部かんさつ日記 第682話「何着だかわかりませんがほぼ完売したそうです」

(次回は6月8日更新です)

2022年6月1日 [施川ユウキ映画コラム]

施川ユウキ映画コラム「全ての映画は、ながしかく」
第19回 インセプション

第19回 インセプション

映画のグッズを集める趣味はないが、ひとつだけ手にして嬉しかった小物がある。昔、『インセプション』の試写会へ行った際にもらった小さな金属製のコマだ。作中ではトーテムと呼ばれている。ディカプリオ演じるコブが肌身離さず持っているアイテムで、夢と現実を区別するために回される。コマがずっと回り続ければ夢、止まって倒れたら現実だ。映画のラスト、ミッションを終えたコブは家路に着くとテーブルの上でトーテムを回す。そして結果を見ずに家族の元へ向かう。トーテムが倒れたかどうかは、観客にもわからない。素晴らしい幕切れだった。
夢といえば、大阪で風呂なしの部屋に暮らしていた時、印象的な夢を見た。大ヒット漫画家になった自分が東京の高級マンションの仕事部屋で佇んでいる。白い壁に出窓があって長机が置いてあり、その前に立って夜景を眺めている。二十歳頃の自分の、チープなサクセス願望がそのまま形になっている夢だ。
『インセプション』を観た当時住んでいたのは、大阪時代と大して変わらない亀有のワンルームだった。コタツの上でトーテムを回す。「上京して漫画で飯が食えて、好きな映画の試写にも仕事で行ける。あの時見た夢の風景とは違うが、これも夢かもしれない」そんなことを考えている内にトーテムは止まる。
それから12年。数回の引っ越しを経て、いつの間にかトーテムを紛失してしまった。最近、急に欲しくなりネットで探してみた。普通に売っていたのだが、商品画像をよく見ると、コマの裏側に「INCEPTION」と印字されている。意味がわからない。映画の中でコブが回しているトーテムには「INCEPTION」などと書かれていない。書かれているわけがない。僕は、作品の世界に憧れているのであって、関連グッズが欲しいわけではない。子供の頃、悟空やクリリンが着ていた亀仙流の道着を欲しいと思ったことはあったが、キャラがプリントされたパジャマは絶対に着たくなかった。それは作品世界の外側にある物で、『ドラゴンボール』の世界からは最も遠い。「INCEPTION」と印字されたコマは『インセプション』の世界から最も遠いのだ。
好きな作品の世界に登場するアイテムであればなんでもいいわけでもない。例えばジェームズ・ボンドがかけていたトムフォードのサングラスが欲しいとかは思わない。単なる現実世界の商品だ。ワクワクがない。
色々考えると、試写でもらったシンプルなトーテムは完璧だった。作中と同じく、現実世界で回すとちゃんと止まる。そして夢の世界だったら永遠に回り続けるかもしれない、そう信じることができるのだ。
今僕が住んでいる部屋は、もちろん高級マンションではないし、窓から夜景も見えない。ただ白い壁に出窓があって、そこに小さな長机を置いている。仕事場の一角だけは、あの時見た夢と同じだ。長机の前に立ち、僕は失くしたトーテムを思い出す。
もしかしたら、今もどこかで回り続けているのかもしれない。

2022年5月25日 [オリジナル4コマ]

柘植文の編集部かんさつ日記 第681話「竹書房にはあります」

(次回は6月1日更新です)

2022年5月23日 [まんがライフオリジナル]

5/26発売!遠藤淑子先生「なごみクラブ」12巻ついに完結です。フェア参加店舗一覧

今週5月26日に遠藤淑子先生の「なごみクラブ」12巻が発売になります。
笑って、泣いて、会員制ホストクラブの従業員とお客様、商店街の人々などを描いたオムニバス読み切りシリーズ、堂々完結です。
月刊まんがライフオリジナルで約15年にわたり連載され愛されてきた人気作の完結ということで、なんと!多数の書店様にて完結記念応援フェアに開催されることになりました⭐
単行本をご購入いただいた方に描き下ろしのペーパーの配布と、また一部名シーンの複製原画がご覧いただける書店様もございます。


ご参加いただく書店様一覧はコチラです🍷
ペーパー配布のみの店舗40軒、ペーパー配布+複製原画展示の店舗8軒、計48軒の書店様でのフェア開催となります。

■ペーパー配布のみ(敬称略失礼いたします)
喜久屋書店 倉敷店
平安堂 諏訪店
三省堂書店 カルチャーステーション千葉店
ブックセンタークエスト 小倉本店
サンミュージック HBかがやき通り店
サンミュージック ハイパーブックス駒井沢
サンミュージック 守山店
サンミュージック ハイパーブックス八日市
サンミュージック 近江八幡店
サンミュージック ハイパーブックス彦根
サンミュージック 長浜店
サンミュージック ハイパーブックス長浜
サンミュージック ハイパーブックス水口店
サンミュージックハイパーブックス大津京店
コミックランド ヒバリヤ
大垣書店 京都ファミリー店
ジュンク堂書店 大宮高島屋店
TSUTAYA 朝日ケ丘店
アバンティブックセンター 京都店
くまざわ書店 高崎店
ファミリーマート ハラトク書店米沢店
ジュンク堂書店 新潟店
啓文社 ポートプラザ店
天一書房 日吉店
谷島屋 浜松本店
須原屋 武蔵浦和店
丸善 博多店
ブックファースト 梅田2階店
紀伊國屋書店 横浜店
宮脇書店 刈谷店
啓文堂書店 府中本店
有隣堂 アトレ亀戸店
大垣書店 高槻店
ブックファースト 新宿店
星野書店 近鉄パッセ店
MARUZEN 広島店
ジュンク堂書店 吉祥寺店
有隣堂 アトレ大井町店
くまざわ書店コミックランドビーワン八王子
加賀谷書店 茨島店

■ペーパー配布+複製原画の展示
MARUZEN&ジュンク堂書店 札幌店
大垣書店 フォレオ大津一里山店
未来屋書店 りんくう泉南店
大垣書店 イオンモール堺鉄砲町店
大垣書店 神戸ハーバーランドumie店
三省堂書店 有楽町店
平安堂 上田しおだ野店
有隣堂 横浜駅西口店

長い間ご愛読ありがとうございました!完結12巻も是非是非お手にお取りください🎵

2022年5月18日 [オリジナル4コマ]

柘植文の編集部かんさつ日記 第680話「マンガ研究会」

(次回は5月25日更新です)

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