2009年9月10日 [施川ユウキ映画コラム]

施川ユウキ映画コラム「全ての映画は、ながしかく」第20回GOEMON

第20回「GOEMON」

 散々な評判だった前作「CASSHERN」は、僕の大好きな作品だ。劇場で観たしDVDも限定版を発売日に買った。好きではあるものの、良い映画かと聞かれたら素直に頷けない作品だったりもする。

 内容は、何がなんだかよく分からないままカッコイイ映像が延々続く、ハッキリ言って自己満足的作品だ。でも、正体不明の熱意だけはビンビン伝ってきて、そこに僕は魅せられてしまった。「あてられた」と言った方が良いかもしれない。DVDには監督のコメンタリーが入っている。そこで彼は「こういう意図があった」とか「こういう裏設定がある」等と楽しそうに語っている。正直あまりカッコ良くないのだが、誰よりも作品を愛してる事だけは、やはりビンビン伝わってきた。恐らく紀里谷監督は他人から評価される事よりも「好きな映像を撮りたい」という欲望の方が圧倒的に勝っている人間だ。安っぽくて薄っぺらい内容だと言われようが、「俺はこれが好きだし、これで良い!」と、純粋に自分の作品を信じているのだろう。
 本作「GOEMON」もまた、監督の大好きな映像を目一杯詰め込んだ作品だ。目が回りそうなアクションやゴテゴテに装飾した衣装や小道具、CGを駆使した背景等、映像への熱意がビンビン伝わってくる。過剰過ぎて、テーマとかメッセージとかどうでもよくなる位だ。その過剰さは、監督自身が持つ生来の子供っぽさから来てるのだろう。例えば大人なら、全体のバランスを考えながら、削って削ってストイックに必要な所だけを抽出させて作品を作っていくのだろうけど、紀里谷監督の場合逆だ。とにかく素材に手を加えまくる。エフェクトをかけまくり、色調やコントラストをいじりまくる。そして出来上がった絢爛豪華なシーンを、次から次へと好きなだけ足しまくっていく。バイキングに連れて行った子供が、ご飯やサラダには目もくれず、ドリンクバーでコーラにメロンソーダ混ぜたり、山盛りにしたデザートにハンバーグを乗せたりしながら真剣に「最高のご馳走」を作り上げる。そういうひた向きさと純粋さが、この作品にはみなぎっている。
 「GOEMON」は映画として見ると、いびつで、冗長で、無駄にギトギトしてるけど、子供の作ったご馳走のような凄みは確実にある。全てのアラを吹っ飛ばす位にある。そのエネルギーにあてられたくて、僕はもう一度劇場に足を運ぼうと思っている。

監督●紀里谷和明 脚本●紀里谷和明、瀧田哲郎
出演●江口洋介、大沢たかお、広末涼子、ゴリ(ガレッジセール)、要潤、玉山鉄二、チェ・ホンマン
上映時間●120分 配給●松竹、ワーナー・ブラザース映画

【イントロダクション】
信長、秀吉、家康。その天下統一の影で、ただ一人、民衆のために戦い続けた男?彼の名は石川五右衛門。金持ちから盗み、貧しき者に分け与え、乱世を自由気ままに生きた伝説の大泥棒。ある夜、彼が盗み出した南蛮製の不思議な箱。そこには、やがて彼の運命を大きく変えていく、信長暗殺の真相が隠されていた。『CASSHERN』の紀里谷和明が驚愕の映像美で紡ぐ絢爛豪華な戦国絵巻。

PAGE TOP