2016年8月1日 [施川ユウキ映画コラム]

施川ユウキ映画コラム「全ての映画は、ながしかく」第102回 アーロと少年

第102回「アーロと少年」

「もし隕石が地球に衝突せず、恐竜が絶滅しなかったら?」という仮説から生まれた、スケールのでかい歴史改変ストーリー。
恐竜だけが言葉と文明(農耕・牧畜)を持つ世界。主人公はアパトサウルスの少年アーロ。事故で父を失い、川に流され、地元から遠くはなれ一人ぼっちになってしまった彼は、一人の人間の子供(スポット)と出会う。そして友情を育みながら故郷を目指し旅をする。王道のビルドゥングスロマンだ。

世界観の元になっているイメージのひとつに、古き良き開拓時代のアメリカがある。アーロの家はトウモロコシ畑を営み、父は絶対的存在であり憧れの対象。物語途中にはたくましいカウボーイも登場する。
スポット少年は、仕草や行動原理がまんま野良犬で、人間でありながらも感情移入が難しいキャラクターだ。この世界では、人間は動物的ポジションにある。スポット以外の人間がほとんど登場しないため意識しづらいが、「恐竜が言葉と文明を持つ」ことより、「人間が動物の位置に落とされている」ことの方が衝撃的に思えた。『猿の惑星』的な転倒世界は描かれないものの、かなり不穏な設定だ。
雪山、草原、夕焼け、蛍。大自然の風景が美しいだけでなく、嵐や濁流の恐ろしさも迫力たっぷりに描かれている。表現のアイデアも豊富だ。アーロたちをつけ狙うテロダクティルスのクチバシが、天上の雲から突き出て漂う場面。上下逆にした『ジョーズ』のようで、不気味で恐ろしかった。
物語のクライマックス、感動しながら僕はある映画を思い出しハッとした。『のび太の恐竜』だ。ストーリーこそ違うが、アーロはのび太のように弱虫だし、某箇所がすごい似ている。制作側が観ていたかどうかはわからないが、考えようによってはこの映画、『のび太の恐竜』を人間と恐竜逆にして成立させている……!
全体的にセリフが極力削られていて、代わりに映像が饒舌に語りかけてくる、見応えある作品だった。

hitokoma102

●監督・脚本:ピーター・ソーン
●声の出演: 日本語吹替版キャスト:安田成美/松重豊/八嶋智人/片桐はいり/石川樹 他
●上映時間:93分
●配給:ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン

【イントロダクション】
『モンスターズ・インク』『トイ・ストーリー』のディズニー/ピクサーが描く感動のアドベンチャー・ファンタジー。もしも地球に隕石が衝突せず、恐竜が絶滅しなかったら…そこは恐竜だけが言葉を持つ世界!大きいけれど弱虫な恐竜アーロと、小さいけれど勇敢な人間の少年スポット。すべてが正反対で、言葉も通じない二人のたった一つの共通点は、どちらも“ひとりぼっち”。初めての友情が、永遠に続くことを願う二人だったが…。

PAGE TOP