2016年7月1日 [施川ユウキ映画コラム]

施川ユウキ映画コラム「全ての映画は、ながしかく」第101回 ヘイトフル・エイト

第101回「ヘイトフル・エイト」

タランティーノ監督の最新作は、雪山のロッジを舞台にした密室ミステリー。「吹雪の山荘もの」と呼ばれるいわゆるクローズドサークルだ。タランティーノの過去作で言えば『レザボア・ドッグス』が一番近い。

『イングロリアス・バスターズ』『ジャンゴ』と重めの作品が続いた後のミステリーと聞いて、気楽に楽しめそうと思いきや、3時間近い長尺の密室劇に、見終わった後くたくたになってしまった。息の詰まるような状況で最悪の結末を予感させながら、ひたすら終わりの見えない会話をだらだら続ける、というタランティーノ得意のいつもの奴だ。ファンには堪らないかもしれないけど、トリックや推理目当てのミステリー好きに手放しでお勧めは出来ない。設定はミステリーだけど内容はタランティーノなので、謎解きをしながら観たい人からは「それはルール違反だろ」と言われそうな展開もあったりするからだ。
ヘイトフル(いまいましい)な8人の面々は、お馴染みのサミュエル・L・ジャクソンをはじめ、タランティーノの過去作に出演した顔ぶれが複数。1万ドルの賞金首役の紅一点、ジェニファー・ジェイソン・リーが本当にいまいましくて素晴らしい。劇中何度も殴りたくなるのだけど、その度に殴られてるので笑ってしまう。
ド派手なアクションの代わりにあるのが、ド派手な毒殺シーン。「どんな毒だよ!」と突っ込まざるをえない、漫☆画太郎先生の漫画のような死に方に、やはり笑わせられた。
『イングロリアス~』『ジャンゴ』と違って、歴史的背景を知らなくても楽しめるが、南北戦争直後が舞台でそれにまつわる会話やキャラ設定があるので、南部と北部の関係性や当時の黒人の扱われ方についての知識をうっすらとでも入れてから観ると、より楽しめると思う。
 10作品で引退すると表明しているタランティーノ監督の8作目に当たるのが本作。映画愛は健在だし、何だかんだで撮り続けてくれるんじゃないかなと、いちファンとしては期待したい。

hitokoma98

●監督・脚本:クエンティン・タランティーノ
●出演:出演:サミュエル・L・ジャクソン、カート・ラッセル、ジェニファー・ジェイソン・リー、ウォルトン・ゴギンス、デミアン・ビチル、ティム・ロス、マイケル・マドセン、ブルース・ダーン
●上映時間:168分
●配給:ギャガ

【イントロダクション】
クエンティン・タランティーノ監督初となる密室ミステリーを描いた西部劇。全員が嘘をついているワケありな7人の男と1人の女。雪嵐のため山小屋に閉じ込められてしまう中、殺人事件が起こり次々に意外な真相が明らかになっていく。吹雪が作り出す密室で疑心暗鬼になる中、緊張をほぐすため他愛ない会話をかわし互いを探り合う面々。やがてそれぞれの素性が明らかになり、彼らの過去がつながり始め誰も予想のできないラストを迎える――。犯人は一体誰なのか…?

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