2016年4月1日 [施川ユウキ映画コラム]

施川ユウキ映画コラム「全ての映画は、ながしかく」第98回 007 スペクター

第98回「007 スペクター」

今年はスパイ映画が豊作だ。『M:I5』、『キングスマン』、この先公開を控える『コードネーム U.N.C.L.E.』、スパイ・アクション風の『ワイルドスピード/スカイミッション』もある。そんな中での007最新作。老舗中の老舗とはいえスパイ物は若干食傷気味で、前作までの復習を怠って試写会に臨み、結果激しく後悔することになった。本作は、ダニエル版ボンドの集大成的作品だ。たとえ過去三作を未見でも混乱することはないが、がっつり堪能するためには最低限『スカイフォール』だけでも観ておくことをオススメしたい。

メキシコの伝統的な祝祭「死者の日」がプロローグの舞台だ。群衆の中を歩く骸骨柄のタキシードの背中を、長回しでカメラが追う。ただ歩いているだけのシーンなのに、超絶カッコイイ。そして始まるド派手なアクション。からの、重厚かつセクシー(なんと触手モノ)なPV風オープニング。全てが完璧なボンド映画だ。
悪の組織スペクターの「悪の組織感」にもホレボレさせられる。秘密会議中、影の中登場する首領ブロフェルド。たっぷりと間を取って第一声。逆光で顔は見えない。始末されるために登場するアホっぽい手下。ベタ中のベタなのに、一切セルフパロディっぽくはならない。見事な演出力。後半で出てくる秘密基地も「ザ・秘密基地」って感じだ。
今作では、科学者Qもそこそこ活躍してくれる。ボンドとのやり取りにニヤリとさせられるし、Qメインのスピンアウト映画を作って欲しいと思うくらい魅力的だった。
予告で繰り返し見た「君は嵐のなかで踊るだけの凧だよ」ってセリフとか、雪山にあるスタイリッシュなデザインの病院とか、マッドサイエンティストっぽい拷問とか、とにかく印象的なシーンが色々あって楽しめる。
『キングスマン』を観た時、「普通のスパイ物はしばらくいいや」と思ったけど、王道も良いものは良いと改めて実感させられる一作だった。

hitokoma95

●監督:サム・メンデス ●出演:ダニエル・クレイグ/クリストフ・ヴァルツ/レア・セドゥ/ベン・ウィショー/ナオミ・ハリス/モニカ・ベルッチ/レイフ・ファインズ ●上映時間:148分 ●配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント 

【イントロダクション】
人気スパイアクション『007』シリーズ第24作目。隠された謎に追るべくジェームズ・ボンドは単身メキシコ、ローマと渡っていく。そこでボンドは悪名高い犯罪者の美しい未亡人ルチア・スキアラと出逢い、悪の組織スペクターの存在をつきとめる。ボンドは追い求めてきた敵と自分自身との恐るべき関係を知ることになる――。

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