2016年2月1日 [施川ユウキ映画コラム]

施川ユウキ映画コラム「全ての映画は、ながしかく」第96回 ドローン・オブ・ウォー

第96回「ドローン・オブ・ウォー」

ドローンを運用する現代の戦争を、事実を元に描いた衝撃的な映画。
主人公はラスベガス近郊の空軍基地に勤務する空軍所属のパイロット。空調の効いた小さなコンテナ内で無人機を遠隔操作し、一万キロ離れたアフガンにいるタリバンを空爆している。遥か上空から地上を見下ろすドローンのカメラは、ひとりの標的を神の目のように映し出し、ボタンひとつで天罰を与えるように爆撃する。女性や子供を含む民間人を巻き込んで。やむを得ない犠牲らしい。爆撃後、バラバラになった死体を成果として数える。そして仕事が終わると自宅へ帰り、週末はご近所と家族ぐるみでバーベキューを楽しむ。ちなみに勤務中彼らはパイロットとして飛行服を着用する。ただのコスプレのようだ。

物語にドラマチックな展開はほとんどない。事務仕事のように淡々とミッションが遂行されていく。しかし見せつけられる現実に目を逸らせない。こんな戦争映画は初めてだ。とにかく地味で静か。空爆しまくるのに、モニター越しだと爆音ひとつ聞こえず、そのモニターもチープなゲーム画面にしか見えない。残虐行為は地球の裏側の出来事。これは戦争じゃないのかもしれない。「信頼できる情報」を元に標的がテロリストであると指示されるが、相手は武装しているわけでもなく、座標もただの住宅地だったりして、無差別殺戮のようにも見える。映画の中で、上官は「アメリカをテロから守るため」と何度も言うが、アメリカへの憎しみをひたすら育てているように感じた。
主人公は、任務のストレスからじわじわと精神を病み、嫁との関係も悪化していく。そして彼は命令に反抗し、ある決断をする。彼のラストの行動は、アメリカ的な「身勝手な正義」を、個人のレベルに落としただけだとも解釈できて、議論を呼ぶ終わり方に思えた。
不快感と絶望感で暗く覆われた、恐ろしい作品。原題は『Good Kill』、良いタイトルだ。変えなくていいのに。

hitokoma93

●監督・脚本:アンドリュー・ニコル ●出演:イーサン・ホーク/ブルース・グリーンウッド/ゾーイ・クラヴィッツ/ジャニュアリー・ジョーンズ ●上映時間:104分 ●配給:ブロードメディア・スタジオ 

【イントロダクション】
アメリカ空軍のトミー・イーガン少佐は、F-16戦闘機のパイロットから無人戦闘機の操縦士に転身。ラスベガス郊外のマイホームと砂漠の空軍基地を車で毎日往復し、エアコンが快適に効いたコンテナ内のオペレーションルームにこもり、ミサイルをクリックひとつで発射する。音声の出ないモニターだけで戦場の状況を確認するその任務は、まるでゲームのように現実感が欠落していく。度重なる過酷なミッションにじわじわと精神を蝕まれ、愛妻モリーとの関係までも冷えきっていく。やがてストレスが限界を超えたトミーは、冷徹な指揮官からの人命を軽んじた爆撃指令への反抗を決意するのだった…。

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