2015年12月1日 [施川ユウキ映画コラム]

施川ユウキ映画コラム「全ての映画は、ながしかく」第94回 ナイトクローラー

第94回「ナイトクローラー」

建設現場で盗んだ金網を鉄くず屋に売る底辺のこそ泥だった主人公が、事件や事故のスクープ映像を狙うパパラッチに転身する物語。監督は本作で長編監督デビューのダン・ギルロイ。
前評判の高い作品だったけど、実際すさまじい映画だった。主役ルイスを演じたジェイク・ギレンホールの鬼気迫る演技が神がかっている。役作りに12キロ減量したらしく、ガリガリの飢えたハイエナのような姿で、スクープを求め夜の街を走り回る。最初ダメ人間の話かと思ったら全然違っていた。カメラを手にしてからは、向上心むき出しで、欲しいショットのために被害者宅へ不法侵入したり、死体の位置を勝手に動かしたり、モラル無視で突き進んでいく。

彼は、欧米の特権階級に多いとも言われている社会的に成功していくタイプのサイコパスだ。恐怖心や羞恥心や道徳心を持たず、他人の感情を理解するが共感はせず、自信にあふれカリスマ性があり、並外れた集中力を持ち、損得が絡むと高い能力を発揮する。まさにその特徴にルイスは当てはまっている。
監督はルイスについてこう語っている。「彼のバイブルはネットで見つけた多国籍企業の社訓だ。その内容を真剣に信じている。自己啓発やビジネスアドバイスをネットで見つけ出しては、生きるための武器として磨き上げているんだ」
彼は意識高い系の発言を繰り返すのだけど、その言葉を狂信していて、売り込み先のディレクターに対してありえないほど強気な駆け引きをしたり、ブラック企業の経営者のように助手をこき使う。どのシーンも、その言葉の強さとギラギラした眼差しに圧倒される。とにかくルイスの振る舞いが常にスリリングで、一時も気持ちが休まらない。
彼の行動は倫理的にも法的にも完全にアウトなのだけど、彼は視聴者の欲望に応える努力をビジネス的に最大化しているだけだ。視聴率は押し上げられ彼は成功を手にする。
大衆の欲望はおぞましく、大衆とは我々のことである。

hitokoma91

●監督・脚本:ダン・ギルロイ ●出演:ジェイク・ギレンホール/レネ・ルッソ/ビル・パクストン ほか ●上映時間:118分 ●配給クレジット: ギャガ 

【イントロダクション】
学歴もコネもなく、仕事にあぶれたルー(ジェイク・ギレンホール)は、ある日事故現場を通りかかり、テレビ局に悲惨な映像を売って稼ぐ<ナイトクローラー>と呼ばれる報道スクープ専門の映像パパラッチの存在を知る。さっそくビデオカメラを手に入れたルーは、警察無線を傍受しながら事件や事故の発生を待ち、猛スピードで車を走らせ、現場に駆け付ける。良心の呵責など1秒たりとも感じない彼の過激な映像は高く売れるが、局の要求はさらにエスカレートしていく。そして、遂にルーは一線を越える──。

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