2015年10月1日 [施川ユウキ映画コラム]

施川ユウキ映画コラム「全ての映画は、ながしかく」第92回 チャッピー

第92回「チャッピー」

人工知能を搭載した警官ロボットがギャンググループにさらわれてしまう。人工知能がまだ赤ちゃん同然の状態だったことから、ギャングは彼(チャッピー)を育てて犯罪の片棒を担がせようとする。

チャッピーは、見るもの全てに新鮮な反応をする。牛乳をこぼしたり、アニメを見たり、絵を描いたりする様子は、完全に子供だ。ギャングの嫁は、母性に目覚めてまっとうに育てようとするが、旦那は銃の撃ち方を覚えさせたりと、悪の道に引きこもうとする。生みの親である科学者が、ちょくちょくチャッピーの様子を見に来るのだけど、金のネックレスを身につけ、スラングを使い、ワルっぽい歩き方をするチャッピーを見て、「どんどん不良に…」と不安を募らせていく。ネグレクトの訪問調査をする市の職員みたいで面白い。環境が悪ければ悪に染まりやすい。子育ての問題をロボットに当てはめて描くことで、深刻だけど滑稽にも見える良質のブラックコメディになっている。外に放り出されていじめられるシーンは、火をつけられたり、腕を切断されたり、目を覆いたくなるが、ロボットだからこそ成立する場面だ。
悪役は、ヒュー・ジャックマン演じるAI否定派の技術者だ。窓際に追いやられ暴走していく過程がしっかり描かれていて良かった。
終盤、怒濤のアクションから衝撃の結末につながっていく。子育ての話だったのが、「自我とは?」「命とは?」といった哲学的なテーマに変わる。感動的でかつ、大きな問題提起をする素晴らしい終わり方だ。人工知能の話を突き詰めるとそこにたどり着くのは必然で、SFファンとしても納得のラストだった。
「ショートサーキット」をシリアスにして、「ロボコップ」の自我の問題を足し、ひとつの答えを導き出したような作品。ブロムカンプ監督の前作、「イリジウム」は少し物足りなかったけど、本作はテーマ的に攻めていて大満足だった。

hitokoma89

●監督:ニール・ブロムカンプ ●出演:シャールト・コプリー/ヒュー・ジャックマン/シガニー・ウィーヴァー/デーヴ・パテル ●上映時間:120分
●配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント 

【イントロダクション】
2016年―南アフリカ ヨハネスブルグ。世界で初めて人工知能を搭載された兵器ロボットが誕生し、“チャッピー”と名づけられた。生まれたての知能をもった彼であったが、急速に成長していく。その姿を見た研究者たちは「考えるロボットは人類の敵」とチャッピーを追いつめていくことに…。彼の成長は人類の理想なのか―――。

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