2015年8月1日 [施川ユウキ映画コラム]

施川ユウキ映画コラム「全ての映画は、ながしかく」第90回 イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密 

第90回「イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密」

第二次大戦下の英国で、ドイツ軍の暗号システム・エニグマを解読した天才数学者アラン・チューリング。コンピューターの父の一人とも呼ばれる彼の悲劇的な人生描く伝記映画。
物語は、晩年と、暗号解読チームで奮闘する戦時中の、二つの時間軸で、交互に展開していく。もう一つ少年時代の話も挿入されていくのだけど、そのエピソードも、彼の人生に大きく影を落とす重大な鍵になっている。

アランを演じるのは、ベネディクト・カンバーバッチ。「シャーロック」とほぼ同じキャラだったけど、はまり役だ。ヒロイン、ジョーンを演じるのはキーラ・ナイトレイ。チームに抜擢された彼女もまた、普通を嫌う変人だ。当時は女性が男たちの中で働くことがありえなかった時代。両親に「婚期が遅れる」と反対され仕事を続けられなくなると、アランが「じゃあ僕が結婚します」と申し出て、それをあっさり了承する。
天才を集めたチームの中でもアランの鬼才っぷりは際立っていて、「暗号を解くには専用のマシンを作るべきだ」と言い、誰も理解できないような機械を作り始める。
記憶に残るセリフとして、少年時代に親友から「暗号」を教えてもらった時の会話が印象的だ。「暗号は誰も見ることはできる。でも意味はわからない、解くための鍵がなければね」「それは会話とどう違うんだ? 人は本音を言わず、言葉から本音を読み取る」
紆余曲折の末、暗号解読に成功し戦争終結を二年早めたそうだけど、機密事項のため彼の功績は世間に知られることは無かった。晩年アランは、理不尽な理由で逮捕され、最後は非業の死を遂げる。彼の名誉が完全に回復されたのはごく最近だ。
ネタバレを防ぐため、具体的に書けなかったのだけど、本作のテーマは差別とか、アイデンティティとか、孤独とか、暗号解読とは別にある。もし彼をよく知らないのなら、是非ウィキペディア等で調べたりする前に映画を観て欲しい。その方がより驚けるし、楽しめると思う。

hitokoma87

●監督:モルテン・ティルドゥム ●出演:ベネディクト・カンバーバッチ/キーラ・ナイトレイ/マシュー・グード/マーク・ストロング ●上映時間:115分 ●配給:ギャガ 

【イントロダクション】
1939年、イギリスがヒトラー率いるドイツに宣戦布告し、第二次世界大戦がはじまる。天才数学者アラン・チューリング(ベネディクト・カンバーバッチ)は、英国政府の機密作戦に参加し、ドイツ軍の誇る暗号エニグマ解読に挑むことになる。コンピューターの概念を創造し、“人工知能の父”と呼ばれながらも、時代に翻弄された男の数奇な人生とは…。あらゆる秘密と疑惑が幾重にも積み重なり、チューリングの人生は思わぬ方向へと突き進んでいく。

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