2015年6月1日 [施川ユウキ映画コラム]

施川ユウキ映画コラム「全ての映画は、ながしかく」第88回 シェフ 三ツ星フードトラック始めました 

第88回「シェフ 三ツ星フードトラック始めました」

一流レストランのシェフが、自由のない雇われの身に嫌気が差し、店を辞めておんぼろフードトラックで移動販売を始める。
製作、監督、脚本、主演を務めるジョン・ファヴローは、『アイアンマン』シリーズで有名な監督で、今作は予算規模が全く違う自主映画として製作されている。低予算でも撮りたい映画を撮る! という姿勢が、まんま主人公と同じだということで興味を惹かれ、今回の試写に臨んだ。

「お金は関係ない! 好きなモノを作るんだ!」っていうスタンスは一見カッコイイけど、下手したら作家性ばかりが前に出た、自己満足作品になってしまう可能性もある。本作はと言うと、老若男女にお勧めできる、わかりやすいハートフルコメディに仕上がっている。
敵役として嫌味な料理評論家が出てくるが、心底憎める悪ではないし、別れた妻に引き取られた10才の息子との関係も微妙に距離があるだけで、大きな問題を孕んではいない。極端なドラマを押しつけない気持ちのいい作風で、「ただ美味しい物を食べてもらいたい」と言う主人公カールの作る料理そのままだ。
トラックで売るキューバ風サンドイッチをはじめ、登場する食べ物がとにかく美味そうだった。息子にクロックムッシュを作る日常シーンが特に印象的で、僕はクロックムッシュがあまり好きじゃなかったのだけど、家に帰ってすぐにでも作りたいと思
ってしまった。
物語は、アメリカ大陸をフードトラックで横断するロードムービーとして描かれている。夏休み中の息子を連れた旅で、父子の関係を描いた普遍的な家族ドラマにもなっている。
カールは、ツイッターの炎上がキッカケでレストランを辞めるのだけど、ツイッターによってフードトラックは、評判を高めていく。SNSが物語の大きな役割を担っていて、そこは現代的だ。
まったり系邦画のようなヌルさも感じるけど、軽快なテンポが小気味良く、斜に構えることなく素直に楽しめた。エンドロールのオマケも良かった。

hitokoma85-(1)

●製作・監督・脚本・主演: ジョン・ファヴロー ●出演:ダスティン・ホフマン/ロバート・ダウニーJr/スカーレット・ヨハンソン/ソフィア・ベルガラ/ジョン・レグイザモ/エムジェイ・アンソニー●上映時間:115分 ●配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテイメント

【イントロダクション】
ロサンゼルスにある一流レストランのカール・キャスパーは、メニューにあれこれと口出しするオーナーと対立し、突然店を辞めてしまう。次の仕事を探さなければならない時にマイアミに行った彼は、絶品のキューバサンドイッチと出逢う。その美味しさで人々に喜んでもらう為に、移動販売を始めることに。譲り受けたボロボロのフードトラックを改装し、マイアミ〜ニュー・オリンズ〜オースティン〜ロサンゼルスまで究極のキューバサンドイッチを作り、売る旅がスタートした—。

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