2015年5月1日 [施川ユウキ映画コラム]

施川ユウキ映画コラム「全ての映画は、ながしかく」第87回 ゴーン・ガール 

第87回「ゴーン・ガール」

デヴィッド・フィンチャーは、上の世代にとってのキューブリックに当たるような、自分にとって伝説級の監督だ。オールタイムベストを聞かれると、毎回「セブン」や「ファイト・クラブ」を挙げている。面白いだけでなく、価値観を揺さぶられるような「すごい映画」を撮っている監督なのだけど、一方で「あれ?」って思うような作品も撮っている。あくまで僕の趣味なのだが、「すごい映画」を一作おきに作っている印象だ。そして映画賞を総なめにした傑作「ソーシャル・ネットワーク」から一作空けて制作されたのが、本作だ。

結果的に、期待通りの「すごい映画」だった。突然妻が行方不明になった男ニックが主人公で、映画は事件を追いつつ、妻が綴っていた日記の中身を同時進行で見せていく。日記の内容は、出会いから今に至る夫婦のヒストリー。失踪事件は全米で話題になり、世間の注目は主人公に集まる。ニックは、とぼけ面と不審な態度のせいで、徐々に妻殺しの疑惑を向けられるようになり、そこから驚きの展開が続くのだけど、一切ネタバレできない内容なので、これ以上は何も書きようがなかったりする。
フィンチャーの過去作で言えば、「セブン」や「ゲーム」のような初期のスリラー映画に近い。主人公が、たちの悪いゲームに巻き込まれ、精神的にも身体的にも振り回される。でもどれにも似てなくて、というか今まで観たことのない映画かもしれない。「何なんだこの話は!?一体どう決着がつくんだ!?」と最後まで引っ張りまわされた。
妻エイミー役のロザムンド・パイクが素晴らしく、あまりメジャーじゃない女優だから今後この「ヤバい嫁」のイメージが付いてしまうんじゃないかと心配になるくらいだった。
音楽も不穏極まりなく印象的だ。脚本、映像、音楽、演技、あらゆる面で「ただごとではない映画」だった。観た後、結婚したくなくなるような話なので、デートムービーには向いてないと思う。

hitokoma84

●監督:デヴィッド・フィンチャー ●出演:ベン・アフレック、ロザムンド・パイクほか
●上映時間:2時間29分 ●配給:20世紀フォックス映画

【イントロダクション】
結婚5周年の記念日。誰もが羨むような幸せな結婚生活を送っていたニックとエイミーの夫婦生活の日常が破綻する。エイミーが突然姿を消したのだ。リビングには争った後があり、キッチンからは大量のエイミーの血痕が発見された。警察は他殺と失踪の両方の可能性を探るが、次第にアリバイが不自然な夫ニックへ疑いの目を向けていく。妻の失踪事件によってミズーリ州の田舎町に全米の注目が集まり、暴走するメディアによって夫婦の隠された素性が暴かれていく…。

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