2015年4月1日 [施川ユウキ映画コラム]

施川ユウキ映画コラム「全ての映画は、ながしかく」第86回 フューリー 

第86回「フューリー」

最近は俳優業だけでなく製作も務めるブラピの映画は、ハズレがない。今作は第二次大戦終結直前のヨーロッパ戦線を舞台に、連合軍の戦車を操る5人のチームの戦いと絆が描かれる、戦場映画だ。

終戦直前だけあって、疲弊している雰囲気がありありと出ている。役者たちは実際ブートキャンプに参加し、役作りのために歯を抜いたり、自分の顔をナイフで切って傷を作ったり、撮影前に殴り合いをしたりと、色々やったらしく、とにかく歴戦のツワモノ感がリアルに出ていて、作品世界にすぐに引き込まれた。
主人公は、ブラピ演じるウォーダディーの率いる戦車チームに配属された、戦闘経験のない新兵ノーマン。「いやだー!」と叫ぶノーマンに、ウォーダディーは無理矢理捕虜を殺させ、戦場の現実を叩き込む。ナチスドイツと戦う話だからといって、単純なアメリカ万歳映画ではなく、残酷な現実を描いている。
見どころのひとつは、ドイツの最強戦車ティーガーとの死闘。登場した瞬間から、伝説の獣みたいな貫禄で、かつ化け物級の強さで、味方の戦車は次々と撃破される。チームワークで一台の戦車を操る戦車戦は、手に汗握る緊迫感だ。
もう一つの見どころは、壊れて自走できない戦車内の5人が、300人の精鋭部隊を迎え撃つ、終盤のミッション。「この戦車は俺の家だ」と言うウォーダディーは、チームの正に家長だ。チームは仲間であり、家族のようでもあり、最初は逃げると言っていた4人も何だかんだで共に戦うことを選ぶ。ベタだが胸が熱くなるシーンだ。
戦車物には詳しくないので、限定的な条件下で戦う戦車戦が新鮮で楽しめた。無骨で、鈍重で、地を這うもっさりとした戦車の、男臭さに魅せられる。
本作では敵側のティーガー戦車が、ソ連軍と戦う「泥まみれの虎」という宮﨑駿の漫画がある。それもリアルな戦車戦と、戦車兵の戦場での日常が描かれている。宮﨑監督は復帰して、是非ともそれを長編アニメ化して欲しいと思った。

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●脚本/監督/製作:デヴィッド・エアー
●出演:ブラッド・ピット、シャイア・ラブーフ、ローガン・ラーマン、マイケル・ペーニャ、ジョン・バーンサル  ほか
●上映時間:135分
●配給:KADOKAWA 

【イントロダクション】
1945年4月、戦車“フューリー”を駆るウォーダディー(ブラッド・ピット)のチームに、戦闘経験の一切ない新兵ノーマン(ローガン・ラーマン)が配置された。新人のノーマンは、想像をはるかに超えた戦場の凄惨な現実を目の当たりにしていく。やがて行く先々に隠れ潜むドイツ軍の奇襲を切り抜け進軍する“フューリー”の乗員たちは、世界最強の独・ティーガー戦車との死闘、さらには敵の精鋭部隊300人をたった5人で迎え撃つという、絶望的なミッションに身を投じていくのだった……。

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