2014年12月1日 [施川ユウキ映画コラム]

施川ユウキ映画コラム「全ての映画は、ながしかく」第83回 猿の惑星:新世紀(ライジング)

第83回「猿の惑星:新世紀(ライジング)」

人類が9割が死滅した世界。廃墟の中でかろうじて生存している人間と、遺伝子進化を遂げた猿たちの暮らす森が、大きな橋を挟んで存在していた。本作は、その二つの共同体の衝突と、そこに至る過程を描く戦争映画だ。

映画が始まって15分くらい、延々と猿達の生活が描かれる。「期待値上げてたんだけど、もしかしたら退屈な映画なのか?」と、いきなり不安に駆られた。そんな猿達の森に人間がやってきて、初めて両者は出会う。自分達の生活を脅かしかねない集団の存在を互いに知り、不穏な状況に。その後、互いに疑心暗鬼の状態がジリジリと、映画中盤まで続いていく。緊迫感はどんどん高まっていくのだけど、物語的にも画面的にもかなり地味だ。
緊張がピークに達した時、一発の銃弾が状況を一変させる。雪崩れ込むように戦争状態に突入し、映画は目が覚めたように面白くなる。そして本作が、薄っぺらな娯楽映画ではなく、骨太な戦争映画であった事に気付かされ、それまで延々続いていた地味なくだりが、作劇上必要だったことを思い知る。
猿対人間の戦闘シーンは、映像的にも圧巻だ。現実の戦争でも、容赦なく殺戮できる兵士は、敵をこんな風に「人間のような獣」として見てるのだろうか、みたいなことを考えてしまった。
1968年に最初の『猿の惑星』が公開された時、猿=有色人種の日本人であり、猿だと思っていた人種に白人が支配された世界を風刺として描いている、と言われていた。本作は、猿対人間の戦争と、戦争前夜を通して、異文化と共生することの困難さ、そして分かり合える可能性と希望が描かれている。
「猿は猿を殺さない」。自ら破滅を招いた人間と対比させ、猿の優位性を謳うフレーズとして、この言葉は登場する。しかし、「猿」も「人間」も関係ない。愚かな者は愚かだ。大事なのは、平和な未来を想像し、同じ価値観を共有できるかどうかにある。そんなストレートなメッセージを投げかける、熱い作品だった。

hitokoma80

●監督:マット・リーブス ●出演:アンディ・サーキス、ジェイソン・クラーク、ゲイリー・オールドマン、ケリー・ラッセル ほか ●上映時間:131分 ●配給:20世紀フォックス映画配給

【イントロダクション】
2020年代のサンフランシスコに、睨み合う2つのコミュニティが存在した。ひとつは人間たち。10年前に自らが生み出したウイルスを世界中に蔓延させ、人類の90%が死に追いやられた。僅かに残った者たちが各地に点在し、この地もその一つ。地球自らが自浄するかのように、植物がビルや高速道路を飲み込み始めている。そしてもう一つのコミュニティは猿たち。10年という月日は遺伝子の進化と、知能と言語の獲得、新たな集団の形成、そして独自の文明を彼らに与えていた。衰退の一途を辿る人類に対し、猿たちは日々その数を増し、そのバランスが崩れる日がやってきた…。

PAGE TOP