2014年6月1日 [施川ユウキ映画コラム]

施川ユウキ映画コラム「全ての映画は、ながしかく」第77回 スノーピアサー

第77回「スノーピアサー」

ポン・ジュノ監督が、本格的に海外進出を果たした本作。作家性の強いローカル監督が、潤沢な予算を使って世界進出すると、アクが抜かれて凡作を撮ってしまうというパターンをよく見る。だが、本作に関してはアクがむしろ凝縮されていて、「一般受けは大丈夫?」と心配になるくらい、ぶっ飛んだ怪作だった。

氷河期に突入してしまった地球。人類に残された生存場所は列車「スノーピアサー」だけ。氷の世界を走り続ける列車の車内は、前方車両に暮らす富裕層が支配する絶対的格差社会。人間以下の扱いを受ける最後尾車両で、主人公カーティスは仲間と共に革命を目指し、先頭車両へと突き進む…。設定を聞いただけで名作の予感をビリビリと感じた。
悪役側が清々しいほど嫌な奴らで、暴動に至るまで割と早い。そして車両を移動する毎に繰り広げられる血みどろの死闘!…と思いきや、肩透かしを食らったり、逆に一息ついたと思ったら突然暴力シーンが訪れたり。一車両ずつ一方向に進んでいく話でありながら、意外と単調にならない。人間の本質みたいな深い部分を描こうともしていて、中盤以降は、異世界の扉を順番にくぐり、宇宙の真実に辿り着こうとしているかような高揚感すら覚えた。
「格差社会をぶっ壊そう」的未来SFは、「エリジウム」、「TIME」、リメイク版「トータルリコール」等、最近多い。どれも物足りなく感じていたのだが、本作を観てその理由がわかった気がする。既存のシステムを破壊するようなテーマの映画は、一歩間違えば映画そのものも壊しかねないくらい、演出や設定や脚本に荒っぽさが必要なのではないだろうか。この映画は、理屈や整合性を考えると、突っ込みどころが多い。しかし、「細かいことはいいんだよ!」とねじ伏せるような強いテーマ性と、唯一無二の作家性がある。とにかくエネルギッシュで、T・スウィントンの怪演にはニヤニヤが止まらなかったし、大満足の2時間だった。

77

●監督:ポン・ジュノ ●出演:クリス・エヴァンス、ソン・ガンホ、ティルダ・スウィントン、ジョン・ハハート他 ●上映時間:125分 ●配給:ビターズ・エンド、KADOKAWA

【イントロダクション】
2014年、地球温暖化を防止するために世界で薬品が散布された結果、地球上は深い雪に覆われた。2031年、氷河期に突入した地球上を走る一台の列車「スノーピアサー」。かろうじて生き延びた人々はこの列車の中で暮らし、地球上を移動し続けていた。人類にとって唯一の生存場所であるこの“ノアの箱舟”では、先頭車両の“上流階級”が贅沢な生活を送り、後方車両にひしめきあう“最下層”を支配していた。そんな中、カーティスと名乗る男が自由を求めて反乱を起こし、先頭車両を目指すが―――――。

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