2014年4月1日 [施川ユウキ映画コラム]

施川ユウキ映画コラム「全ての映画は、ながしかく」第75回 ザ・イースト

第75回「ザ・イースト」

「アナザー・プラネット」は、去年観た映画の中でも新鮮な印象を残した作品だった。「主演・製作・脚本をやってる新人のブリット・マーリングとは何者なんだ? 他の作品も観たい!」と気になっていたものの、次作は日本では公開されず。やきもきさせられていた所、「ザ・イースト」日本公開の情報が。そんな訳で、期待しながら試写会に臨んだ。

主人公は、悪徳企業を標的とする環境テロ組織(イースト)に潜入捜査する女性調査員サラ。共に活動していく内に、彼女は徐々に彼等の信念に共感を覚え始める。「正義とは何か」という葛藤を、タイムリーな題材で描く社会派サスペンスだ。
海を汚染した石油王の豪邸に原油を流し込む。冒頭で描かれるイーストのテロ活動だ。テロの標的も企業だが、この映画は調査する諜報機関も企業。CIAに派遣された契約社員が情報を漏洩したスノーデン事件が記憶に新しいが、アメリカは、警察業務の一部とか刑務所の運営管理とか、あらゆる仕事が民間委託されている。アメリカのそういう側面について、本作は問題提起している。
その日計画されていたテロは、製薬会社の重役が集まるパーティーで、シャンパンにその会社の新薬を混ぜるという作戦。すでに市販されてるこの薬は、脳に異常をきたす副作用がある。被害を恐れたサラは上司に連絡する。上司の答えは「その製薬会社は、ウチの顧客じゃない」サラが雇われている調査機関は、飽くまでもクライアントの利益のために活動をしているのだ。本作に登場する組織の中で、正義や公共の利益を目的に動いてるのはイーストだけ。だがイーストは、暴走を続けるテロ組織。身の振り方に苦悩するサラ。結局正義や公共性についての判断は、組織や他人に委ねるのではなく、自分自身で行うしかないのだ。
「アナザー・プラネット」のようなSFとはまた違う、実直な社会派映画。ブリット・マーリング、才色兼備というか凄い才能だ…。

75
●監督:ザル・バトマングリ ●上映時間:116分 ●配給:FOXサーチライト・ピクチャーズ ●出演:ブリット・マーリング、アレキサンダー・スカルスガルド、エレン・ペイジ、他

【イントロダクション】
環境汚染や健康被害などをもたらす企業を狙いカゲキな報復活動を行う環境テロリスト集団“イースト”。元FBIエージェントのサラはクライアント企業を彼らのテロ行為から守るため、“イースト”への潜入捜査を命じられる。サラは彼らと生活を共にして、健康被害をこうむっている人達の実情を知るうち、反発から共感へ、“イースト”の理念に正当性を感じるようになる。また集団を率いる謎多きリーダーのベンジーにも惹かれていく。捜査員としての使命感か、自分の倫理観か。“イースト”の最後にして最大のテロ実行までの刻限の近づく中、サラの下した決断とは――。

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