2014年3月1日 [施川ユウキ映画コラム]

施川ユウキ映画コラム「全ての映画は、ながしかく」第74回 ゼロ・グラビティ

第74回「ゼロ・グラビティ」

3D映画は、3Dである必然性を感じる作品が「アバター」以降ほとんど無い。「新しい映像体験はもう得られないだろうな…」と興味を失っていたのだが、本作で鮮やかに覆された。個人的な趣味嗜好で言えば、「ゼロ・グラビティ」は「アバター」を超える大傑作3D映画だ。

宇宙空間で事故に遭った主人公が、周回軌道上を漂いながら地球に帰還するため奮闘するというシンプルな物語。「127時間」や「リミット」のように、極限状況を主人公視点のみで描いていた、サバイバルサスペンスドラマだ。
とにかく映像に見応えがある。多用されるのは、「トゥモロー・ワールド」でも印象的だった、キュアロン監督得意の長回しカット。ゆっくりと無重力を漂うようなカメラワークで映し出される3D映像が、宇宙空間の3次元的表現を見事に成功させている。「宇宙空間って、こんな感じなのか…」と、今まで味わったことのないような映像体験に興奮し、3D酔いもリアルな無重力体験の一部に感じられる程だった。
映しだされる映像は、ことごとく美しい。背景に見える地球も、真っ暗な闇も、球になって漂う涙の雫も、デブリに破壊される宇宙船の残骸一つ一つまでもが、とにかく美しい。
そして美しさとは裏腹に、重力や音や空気の無い世界の、孤独や息苦しさや絶望感も、圧倒的だった。タイトルにもなっているように、特に無重力の恐怖について、随所に描かれている。宇宙空間では、周りに触れられるものがない限り、自分が漂っていく方向に永久に進み続ける。体のどこかに力が加わって姿勢が傾くと、そのまま永久に体が回転し続ける。留まることすらままならない。すぐそこに死がある。人間が来るべきでない世界だ。宇宙の美しさと恐ろしさ。それを余すこと無く堪能できる。
映像体験としては、今年観た映画の中ではダントツに素晴らしかった。上映終了後、試写会場を出て、地面を踏みしめる。そして、ひたすら重力に感謝した。


●監督:アルフォンソ・キュアソン ●上映時間:91分 ●配給:ワーナー・ブラザース映画 ●出演:サンドラ・ブロック、ジョージ・クルーニー他

【イントロダクション】
地表から60万メートル上空。すべてが完璧な世界。そこで、誰もが予測しなかった突発事故が発生。スペースシャトルは大破し、船外でミッション遂行中のメディカル・エンジニアのストーン博士と、ベテラン宇宙飛行士マットの二人は、無重力空間《ゼロ・グラビティ》に放り出されてしまう。漆黒の宇宙で二人をつなぐのは、たった1本のロープのみ。残った酸素はあとわずか。地球との交信手段も断たれた絶望的状況下で、二人は無事生還することができるのか…!?

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