2014年2月1日 [施川ユウキ映画コラム]

施川ユウキ映画コラム「全ての映画は、ながしかく」第73回 トランス

第73回「トランス」

傑作「トレインスポッティング」をきっかけに、ダニー・ボイル監督は世界的にも注目されていたと思うのだけど、以降の作品はどれも個人的には微妙な感じだった。
監督への興味も年を追うごとに薄まっていったのだが、2008年「スラムドッグ$ミリオネア」で、12年ぶりにどストライクな作品を見せてくれた。次作「127時間」も、前作とは方向性の違う傑作で、自分の中でダニー・ボイルは、「次回作も必ず観る監督」の一人になっている。
そんな期待に胸膨らませ臨んだ今作「トランス」は、斬新で謎めいた、迷路のような作品だった。

冒頭の絵画強奪シーンで、よくあるスタイリッシュな犯罪ものか…と思いきや、主人公サイモンが記憶喪失になり、催眠療法で記憶を取り戻すという予想外の展開に。女性催眠療法士エリザベスの登場をきっかけに話がおかしくなっていき、ギャングのリーダーとサイモンと彼女、作中人物たちの人間関係も、徐々にややこしくなっていく。
前半部分は、ギャングのリーダーフランクから拷問を受けるサイモンに感情移入しながら、「フランク、酷いやつだ! コイツをやっつける話だな?」という気分で観ることになる。エリザベスも、主人公を助けるヒロインとして位置づけられるのだけど、色々あって、見終わった後は3人の印象がガラリと変わってしまう。
監督はインタビューで「(ギャングのリーダーフランクが)まるで失恋したティーンエイジャーのようになる」と語ってるが、正にそんな感じだった。
ネタバレになるので、あまり内容が書けないのだけど、催眠療法を題材にした映画だけあって、トランス状態になったような気分で、気持ち良く謎に翻弄させられた。
展開がさっぱり読めず、失われた記憶の謎だけでなく、「一体この映画は、観客をどこに連れて行くつもりなんだ…!?」と、全体の作りそのものにドキドキさせられる、スリリングな作品だった。


●監督:ダニー・ボイル ●上映時間:102分 ●配給:20世紀フォックス映画
●出演:ジェームズ・マカヴォイ、ヴァンサン・カッセル、ロザリオ・ドーソン他

【イントロダクション】
ゴヤの傑作が出品され興奮に満ちたオークション会場にガス弾が投げ込まれた。競売人のサイモンは緊急時のマニュアル通り、絵画をバッグに入れて金庫へ向かうがそこにいたのはギャングのリーダー、フランク。実はサイモンはギャングの仲間で絵画を奪われたフリをする計画だった。しかしサイモンはフランクに抵抗し、逆に殴り倒されてしまう。フランクがバッグを開けると中の絵は既に無く、サイモンは絵画の隠し場所も隠した理由も思い出せない状態に。フランクは催眠療法士によりサイモンの記憶を蘇らせようとするが…。

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