2014年1月1日 [施川ユウキ映画コラム]

施川ユウキ映画コラム「全ての映画は、ながしかく」第72回 エリジウム

第72回「エリジウム」

ヨハネスブルグ+エビ星人という組合せがインパクトを残した、「第9地区」のブロムカンプ監督による新作。
大規模なスラムと化したロサンゼルスの全景から、ゴージャスな理想郷を実現したスペースコロニー、エリジウムを映す冒頭のショットで、完全に心をつかまれた。二極化した格差社会を描いたSFと言えば、「TIME/タイム」やリメイク版「トータルリコール」が記憶に新しい。ビジュアルイメージとしては「オブリビオン」も近い。どれもストライクだった自分としては、最高の出だしだ。

物語は、スラムで底辺に喘ぐ主人公マックスが、事故により余命5日と宣告され、一念発起しエリジウムを目指す。どんな怪我や病気も一瞬で完治させる医療ポッドが、エリジウムにはあるのだ。前作「第9地区」は、難民や移民の問題をエビ星人に投影して描いていたが、今作は社会格差、医療格差問題がテーマのひとつとして込められている。ただ前作と比べると、全体的に王道エンタメ路線に振れていて、展開に大きなひねりは無い。シンプルでわかりやすい内容になっている。
ガジェット的には、マックスが身に付けるパワードスーツが特徴的だ。機械を身に纏うのだけど、着るのではなく、手術で骨に直接ネジで留める。余命5日で死にそうなマックスが、機械を括りつけられ、命を賭けて肉弾戦を繰り広げる。ボロボロで戦う姿がひたすら痛々しく、グッと来る。
最近のハリウッドは、日本のサブカルチャーから影響を受けているクリエイターが多く、ブロムカンプ監督もそのひとりだ。
忍者、日本刀、桜、といったジャパンテイストが所々入っている。
それが微笑ましく思える人も多いだろうけど、個人的には目新しさがなくてちょっとダサく見えてしまった。
マット・デイモンのスキンヘッドや、ジョディ・フォスターの悪役っぷりは新鮮。物語のラスト、マックスの決断に思わず涙腺が緩んだ。


●監督/脚本:ニール・ブロムカンプ ●出演:マット・デイモン、ジョディ・フォスター、シャールト・コプリー、アリス・ブラガ他 ●上映時間:109分 ●配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント

【イントロダクション】
舞台は2154年、人類はエリジウムと呼ばれる汚れなき人造スペースコロニーに住む富裕層と、人口過剰で荒廃した地球に住む貧困層とに二分化されていた。地球の住民は蔓延する犯罪と貧困から逃れようと必死だった。事故により余命5日と宣告された地球に住む労働者マックスは、エリジウムにどんな病気でも治すことのできる装置があることを知り、エリジウムへの潜入を図るが―。

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