2013年9月1日 [施川ユウキ映画コラム]

施川ユウキ映画コラム「全ての映画は、ながしかく」第68回 オブリビオン

第68回「オブリビオン」

監督の前作「トロン:レガシー」は、自分には合わなかった。脚本がつまらないせいで、何度観ても途中で寝てしまう。ただ、映像のセンスはかなり自分好みだったこともあり、今回「トム・クルーズが選んだんだし、脚本も大丈夫なはず…!」と、大きな期待を持たず試写に臨んだ。結果、大満足な作品となっていた。

この監督が主に描きたいのは、物語やキャラクターではなく、世界観であり情景だ。具体的には「何もない広大な終末世界で、取り残されたように生きている、静かで美しい情景」。前作でもコンピューター内世界で、それに近い描写があったし、今作は更に力を入れて、崩壊後の世界を描いている。
宇宙人の侵略で瓦礫の山となった地球。生き残った人類は地球外に移住し、地上には誰もいなくなっている。主人公ジャックは、高度千メートルのスカイタワーの頂上で、一人の美女と暮らしている。「ドラゴンボール」のカリン塔を、てっぺんだけ超高級マンションにしたような造りのタワーだ。しかもプール付き。そして天国のような場所から、バブルシップに乗り込み、どこまでも続く荒涼とした地表を、日々空からパトロールしている。ジャックも美女も記憶を持たない。美しく、静かで、快適で、それが永久に続いていくような幻想世界。前半、結構な時間を世界観の構築に費やしていて、監督の本気度がうかがえる。
脚本がイマイチだった「トロン:レガシー」と比べて、今作はそれらがしっかりと作りこまれている。展開としては、地上に潜んだエイリアンの生き残りに攻撃されたり、諸々あるのだけど、少し語るだけでも重要なネタバレになってしまいそうなので、触れないでおく。
目まぐるしい展開は無い。だが、ミステリアスな設定と、居るだけで十分なトム・クルーズのおかげで、退屈せずに世界観をじっくり堪能できた。
とにかく、物語が動き出す前の世界観描写が個人的には最高だったので、公開したら劇場で再びどっぷり浸りたいと思う。良作だ。


●監督/原作/製作:ジョセフ・コシンスキー
●出演:トム・クルーズ、モーガン・フリーマン、オルガ・キュリレンコ、メリッサ・レオほか
●上映時間:2時間4分 ●配給:東宝東和

【イントロダクション】
2077年、エイリアンの攻撃を受け地球は全壊し、人類は他の惑星へ移住した。荒廃した地球に残り、上空から監視していたジャックは、ある日墜落した宇宙船で眠る美女ジュリアを発見する。目を覚ました彼女はなぜか会ったことのないジャックの名前を口にした。不思議な結びつきを感じながら、彼は次第に現実に疑問を抱くようになっていく。人類のいない地球に残されたジャックと突如現れたジュリアの時空を超えたラブストーリー。

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