2013年7月1日 [施川ユウキ映画コラム]

施川ユウキ映画コラム「全ての映画は、ながしかく」第66回 クラウド アトラス

第66回「クラウド アトラス」

この映画は、構成と役者の起用の仕方が独特だ。異なる時代を舞台に、6つの物語が同時進行する。同じ役者が、性別や人種や年齢の違う役を特殊メイクで演じていて、それが主役だったり、観客も気づかないような端役だったりする。そうする事で、生まれ変わりを表現しているのだ。ハル・ベリーが老医師(男)の役をやったり、未来のソウルが舞台のエピソードではそれぞれが釣り目メイクにして韓国人役をやったり、かなり大胆で強引に見える。

本作のテーマは、一言で言うと「善も悪も人種も性別も関係ない。人の魂は皆等しく価値のあるもので、未来に向かって全ては繋がっている」みたいな事だと思う。哲学的なテーマを扱う場合、「2001年宇宙の旅」のようになるべく説明しない方が良いのだけど、この監督は結構テーマをセリフにしてしまう。結果、映画からマジックが奪われ、軽々しい印象になってしまっている。しかし本作の場合、無茶な扮装で元々滲み出ていたチープさに磨きがかかり、良い方向に突き抜けたように感じた。
SFとかラブストーリーとかサスペンスとか、やりたい事を全部詰め込んで、役者達が様々なメイクをしながら、ワイワイ作ったような映画。この感じ、何かに似ていると思ったら、高校生や大学生の作る学園祭映画だ。壮大なテーマを掲げる所も、背伸びしたがる学生っぽい。そう思うと、チープと言うより純粋無垢に見えてくる。
色んなジャンルの映画が詰まっていて飽きさせないし、作り手の作品に対する愛も、ひしひしと伝わってくる。
ビッグバジェットで、ここまで実験的かつ意欲的な作品が製作できる事に驚かされた。
エンドロールで誰がどの役をやっていたのか種明かしされる。ヒュー・グラントが蛮族の首領をやっていたのがわかったりと、最後までお祭り感覚で楽しく観れた。
ちなみに、元ネタのひとつにもなっているSF映画「ソイレント・グリーン」を、鑑賞後観ると、より楽しめると思います。


●監督/脚本:トム・ティクヴァ、ラナ・ウォシャウスキー、アンディー・ウォシャウスキー
●出演:トム・ハンクス、ハル・ベリー、ヒュー・グラント、ベドゥナほか
●上映時間:172分 ●配給:ワーナー・ブラザース

【イントロダクション】
舞台は19世紀から24世紀。主人公は、6つの時代と場所で、6つの人生を生きる男。その人生は悪人で始まるが、様々な数奇な経験を経て、ついには世界を救うまでに魂が成長していく男の物語だ。過去・現在・未来にまたがる500年の間の6つのエピソードが、主人公の男を軸として交差していく。そこに生きる人々は姿が変わっても引かれ合い、何度も何度も出会っては別れ、争いと過ちを繰り返す。親子、夫婦、兄弟、恋人、友人、あるいは敵同士となっても、いつかはその愛を成就するために。

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