2013年5月1日 [施川ユウキ映画コラム]

施川ユウキ映画コラム「全ての映画は、ながしかく」第64回 LOOPER/ルーパー

第64回「LOOPER/ルーパー」

タイムトラベル物という使い古されたジャンルでありながら、冒頭からガッツリ引きこまれた。理屈で考えると突っ込みどころが多いものの、センスの良さで何となく説得されてしまう、不思議な感覚のSF。去年観た「ミッション:8ミニッツ」を思い出す。

舞台は今から30年後の世界。主人公ジョーの仕事は、30年後(つまり今から60年後)の未来から送られてくる標的を淡々と殺していく処刑人、通称「ルーパー」。依頼を受けると、指定された時間と場所でじっと待ち、縛られた標的がパッと目の前に出現した瞬間銃で撃ち殺す。その仕事の内容や彼の生活、ルーパーの引退の仕組み等、冒頭20分で描かれていく世界観に、どんどんと魅了されていく。停滞しきった未来感とノワール感が、郊外の風景と絶妙にマッチしている。どこかで観た気がするのに新鮮だ。
ある時ジョーの前に、標的として未来の自分(ブルース・ウィリス)が送られて来て、そこから物語が大きく展開する。「ブルース・ウィリスが登場したからド派手なアクションが始まるんだろうな…」と思いきや、何だかんだで中盤以降、舞台はトウキビ畑の真ん中の一軒家に移り、そこで出会った母子とのドラマがじっくりと描かれていく。
トンデモな設定から、風呂敷をバタバタと広げて興味を持続させる方向に、この映画は舵を切らない。展開は大人しめになるけど、先が読めない緊張感は変わらず。そして、だだっ広いトウキビ畑という寂しげなシチュエーションで、世界の未来を左右する大事件が起こる…。
あまり前情報を入れず観たので、ターミネーター的なアクション映画だとボンヤリ想像していたんだけど、全然違った。ヒネリの効いた設定と脚本で、青年の葛藤と成長を描いた、知的なドラマ作品だ。母の愛に未来を託すラストも素晴らしい。
今更タイムトラベル物で、こんな新鮮な映画が作られることに驚かされた。


●監督/脚本:ライアン・ジョンソン
●出演:ブルース・ウィリス、ジョセフ・ゴードン=レヴィット、エミリー・ブラントほか
●上映時間:118分 ●配給:ギャガ、ポニーキャニオン

【イントロダクション】
近未来、タイムマシンは犯罪組織のみが利用するものとなっていた。彼らは証拠を残さず敵を消し去りたい時、30年前に転送するffルーパーと呼ばれる暗殺者の元へ。凄腕ルーパー、ジョーの元にターゲットの抹殺指令が入る。だが、送られてきたのは30年後の自分だった。引き金を引く事を躊躇ったジョーは不意を突かれ逃げられてしまう。必死の追跡の後、ようやく未来の自分を追い詰めたジョーに、彼がこの時代へ来た驚くべき理由が明かされる…。

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