2013年3月1日 [施川ユウキ映画コラム]

施川ユウキ映画コラム「全ての映画は、ながしかく」第62回 悪の教典

第62回「悪の教典」

こういう皆殺し系映画は、最初はショッキングだけど見てるうちに感覚が麻痺してくる。なので後半は、大抵フィクションとして楽しめるようになる。いつも「心臓に悪いから早く麻痺させてくれ!」って思いながら見るのだけど、本作はなぜか、延々続く大虐殺クライマックスシーンでもずっと心臓のバクバクが止まらなかった。なかなか麻痺させてくれない。前半で、作品世界がいかに現実的な日常であるか、蓮実がどういう人間であるか、丁寧に積み重ねていて、そのおかげで終盤、荒唐無稽な地獄絵図的展開になっても、簡単に現実感が崩されないのだろう。

殺戮シーンでは、殺される側が一矢報いたり、攻防を繰り返しながらといったセオリーがほぼ無く、蓮実無双といった感じに、最後まで一方的に殺していく。気付いたら息継ぎできないまま潜水で2時間泳ぎ切らされてしまうような、悪夢のような映画体験を味わわされる。
胸糞悪い内容ではあるのだけど、自分としては伊藤英明のおかげで、ある意味スカっと見ることが出来た。
伊藤英明と言えば、何となく好青年役ばかりやってるイメージがある。ひねくれ者の自分は「うそくせーなー」とかいつも思っていたのだけど、「実こういう皆殺し系映画は、最初はショッキングだけど見てるうは殺人鬼だった!」っていうこのキャスティングは、正解を教えてくれたようで、とにかく腑に落ちた。実際演じられるシリアルキラーっぷりも、嘘っぽさが微塵もなく、こういう面をド直球で見せてくれるのは、役者としてやはり誠実な人なのだろうと、感動すら覚えた。
テーマ曲に「マック・ザ・ナイフ」というジャズのスタンダードナンバーを使っていて、惨劇のシーンで陽気に流れる。こういう演出は、使い古されているので、「今っぽさに欠けるな…」とか、最初思ったのだけど、恐ろしいくらい内容とマッチしていて、上映終了後帰宅して、youtubeでリピート再生してしまう位、好きになっていた。
見終わってどっと疲れる、エネルギッシュな映画だった。


●監督:三池崇史 ●原作:貴志祐介
●出演:伊藤英明、二階堂ふみ、染谷将太、吹越 満ほか。
●上映時間:2時間9分 ●配給:東宝

【イントロダクション】
高校教師・蓮実聖司は生徒から絶大な人気を誇り、学校やPTAの評価も高く、「教師の鑑」とも呼べる存在。だがそれは仮面であり、彼は他人への共感を全く持ち合わせていないサイコパス(反社会性人格障害)だった。蓮実はトラブルや障害を取り除くために人を殺して行く。いつしか周囲の人間を自由に操り学校中を支配しつつあったが、小さな綻びから自らの失敗が露呈。それを隠滅するため、クラスの生徒全員を惨殺することに…。

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