2013年1月1日 [施川ユウキ映画コラム]

施川ユウキ映画コラム「全ての映画は、ながしかく」第60回 アイアン・スカイ

第60回「アイアン・スカイ」

70年間、月の裏側に潜伏していたナチスが、UFOで攻めて来る! このプロットだけで、面白いに決まっていると確信し、予告を見て「想像していた方向性の面白い奴だ!」と更に期待値を高め、試写を観る直前には「相当ハードルを上げてしまっている…」と不安にさえ思った本作品。観終わってみれば、大満足の傑作だった。

ストーリーは「月からナチスがやってくる」の一文でほとんど言い切っている。この映画の魅力は、物語の展開よりも、キャラクターや、全編に散りばめられた風刺たっぷりのブラックジョークだ。キャラクターの中でも特に惹きつけられるのは、ほぼ主役と言っていいヒロインのレナーテ。ひと癖もふた癖もある登場人物達の間で奮闘する、純真無垢なナチ娘だ。編集されたチャップリンの「独裁者」を観て、ヒトラーの素晴らしさを語るも、地球でオリジナルの内容を知ってショックを受けたり、人類愛を真摯に説くも、演説能力をアメリカ大統領の広報官に利用され選挙活動に使われたりと、ズッコケっぷりに目が離せない。
支持率アップの為に、ファッションモデルの黒人男性を宇宙飛行士にして月に送り込んだ女性大統領。「Yes SheCan!」がキャッチコピーの彼女のキャラクターも、過激で魅力的だ。「ナチスが攻めてきます」と聞かされ「戦争を始めた大統領は必ず再選する!」と喜び、月に資源があると分かると「全部アメリカの物だ」と言い張る。
他にも、マッドサイエンティストに白人にされた黒人宇宙飛行士や、イケメンで野心家のナチ将校や、その彼に振られた腹いせに月面へミサイルを打ち込む女性広報官(兼、宇宙戦艦艦長)など、どのキャラも立ちまくりだ。
ナチもアメリカも各国首脳も、まとめてズバズバ斬りまくる、痛快な作品。ネットでよく見る、「ヒトラー?最期の12日間?」で総統がブチ切れする場面のパロディが意外な所に入れられてて、思わず吹き出してしまった。


●監督:ティモ・ヴオレンソラ
●出演:ユリア・ディーツェ、ゲッツ・オットー、クリストファー・カービー、ウド・キアほか。
●上映時間:93分 ●配給:プレシディオ

【イントロダクション】
2018年、再選を目指す米大統領により、選挙PRのために月に送り込まれた黒人ワシントンは月面に上陸。しかし鉤十字を身にまとったクラウスに拉致されてしまう。彼らは第二次対戦後月へと逃亡したナチスで、地球へ復讐を果たすべく月の裏側に第四帝国を築き軍備を増強していたのであった。機は熟し、ワシントンをガイドに月面総統閣下は地球への侵略を開始する。米は地球防衛軍を結成。前人未到の宇宙規模の戦いが今、始まる!

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