2012年11月1日 [施川ユウキ映画コラム]

施川ユウキ映画コラム「全ての映画は、ながしかく」第58回 ベルフラワー

第58回「ベルフラワー」

世紀末を過ぎても人類は滅びなかった。この映画は、少年の頃夢見た文明崩壊後の荒涼とした終末世界を、未だ純粋に信じようとする青年二人の友情物語だ。

ウッドローとエイデンは、「マッドマックス2」を愛し、悪の首領ヒューマンガス様に憧れる、いい歳の大人だ。来るべき崩壊後の世界をサバイブする為、火炎放射器を自作したり、車を改造したり、充実した毎日を過ごしている。ある日バーで開かれたコオロギ早食い大会( !?)に成り行きで参加したウッドローは、対戦相手のミリーに一目惚れ。何とか恋人同士になり、順調な関係が続くのだけど、唐突にミリーに裏切られ、彼は失意のどん底に陥る。
ウッドローは失恋のショックを引きずったまま、現実とも妄想ともつかない日々過ごす。彼を元気付ける為に、「戦闘用マシン、メデューサ号を完成させようぜ!」と、改造車を見せに定期的に現れるエイデン。女という幻想、崩壊後の世界という幻想、「ミリーへの復讐」というウッドローの妄想。不確かな物ばかり描かれる中、エイデンの友情だけが確かな現実で、本物で、頼もしい。やがて完成したメデューサ号に二人は乗り込み、スーパーチャージャーをうならせ、火炎放射しながら走り出す。
この物語は、主演も務める監督自身の実体験だ。メデューサ号も実際の愛車で、「マッドマックス2」への偏執的な愛も現実だ。改造したカメラで撮った幻想的な映像は、繊細でありながら荒削り。この作品はメデューサ号と同じく、DIY精神と溢れる情念で作り上げられている。何もかもが、痛々しく生々しいのは、魂を込めたプライベートな作品だからだろう。
「もうダメだ、女は信じられない」このキャッチコピーが、全てを語っている。だから男はヒューマンガス様を信じる。メデューサ号を完成させる。そして映画を作るのだ。


●監督:エヴァン・グローデル
●出演:エヴァン・グローデル、ジェシー・ワイズマン、タイラー・ドーソン、レベッカ・ブランデスほか。
●上映時間:106分
●配給:キングレコード+ビーズインターナショナル+日本出版販売 共同配給

【イントロダクション】
『マッドマックス2』の世界を愛し、悪の首領ヒューマンガスに憧れる親友同士のウッドローとエイデン。働く気もない男たちは世界滅亡を夢見、日々火炎放射器の破壊力を追求していた。ある晩、ウッドローはミリーという女と出会い、思いがけない激しい恋に落ちてしまう。しかし彼女の裏切りを知り、激怒したウッドローは、火炎放射器を手に現実と悪夢が乱反射するカオスの中へと突き進んで行く。絶望の果て、男の目に映った世界とは?

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