2012年7月1日 [施川ユウキ映画コラム]

施川ユウキ映画コラム「全ての映画は、ながしかく」第54回 ヒューゴの不思議な発明

第54回「ヒューゴの不思議な発明」

「アバター」以降、ここ数年3D映画がやたら増えている。何でもかんでも3Dにしたがる傾向に、個人的には辟易しているのだけど、本作「ヒューゴの不思議な発明」は、3Dで見せる必然性がある、画期的なテーマを持った珍しい作品だ。

父親の遺した機械人形の秘密を解き明かそうと奮闘する、孤独な少年ヒューゴ。彼の冒険を、華麗なCGを駆使した童話チックな世界観で描く。というのが大まかな作品の概要だ。しかしこの映画は、途中から徐々に本筋とは別の物語を語り始める。
それは、映画の創世記にSFXの基礎を作った職人監督、ジョルジュ・メリエスの物語だ。童話チックな世界観の中、実在の人物が登場することに、最初は若干戸惑わされた。
だが話が進むにつれて、想像の世界を映画で実現したメリエスにとって、この世界観で語られるのは、むしろ自然なことのように感じた。
メリエスは元手品師だ。見世物としての映画を撮り続け、様々なSFX技術を開発した。この映画が、最新のCGかつ3Dで描かれることは、彼に対する最大の賛辞になっている。3Dで見せる必然性が、そこにはあるのだ。
世界最初の映画は汽車がホームに入ってくる映像で、初めて映画を観る観客は驚いて客席から逃げた、というエピソードが作中に出てくる。これは恐らく、機関車が突っ込んでくる場面の伏線になっている。現在のハイエンドの技術で見せて、当時の観客の驚きを追体験させようという意欲的な演出だ。
この映画には、作り手側の映画愛を感じる場面が所々にある。そういう部分を発見すると、観てる側としても何だが嬉しくなるのだ。
メリエスの作品もいくつか実際登場し、堪能することができる。子供でも大人でも楽しめる、オススメの映画だ。


●監督:マーティン・スコセッシ
●出演:エイサ・バターフィールド、クロエ・グレース・モレッツ、ジュード・ロウほか。
●上映時間:2時間6分
●配給:パラマウント ピクチャーズ ジャパン

【イントロダクション】
1930年代のフランス、パリ。父を火事で失ったヒューゴは駅の時計台に隠れ住み、駅の時計のネジを巻いて毎日過ごしていた。ひとりぼっちのヒューゴの唯一の友達は、亡き父が遺した壊れたままの“機械人形”。その秘密を探るうちに、ヒューゴは機械人形の修理に必要な<ハートの鍵>を持った少女イザベルと、過去の夢を捨ててしまった老人ジョルジュに出逢う。そして、ヒューゴは機械人形には、人生と世界の運命も変えてしまう秘密のメッセージが隠されていることを知るのだが…。

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