2012年5月1日 [施川ユウキ映画コラム]

施川ユウキ映画コラム「全ての映画は、ながしかく」第52回 J・エドガー

第52回「J・エドガー」

あらましだけ聞いてイメージしてたのは、影でアメリカを支配するまでなった男の、波乱万丈な一代記だったのだが、思いのほか地味で、良くも悪くも拍子抜けした。主人公J・エドガー・フーバーは、カリスマ性溢れる支配者的人物では全然無く、共産主義の台頭に危機感を抱く、小心者で仕事熱心ないち公務員だ。

冒頭、「私の物語を語る時がきた」と言って、自伝を口述しはじめる所から物語は始まる。で、全編に渡って彼の仕事が武勇伝的に綴られていくものの、さっぱり派手さが無い。しかも所々嘘臭い。最も大きな功績として語られる誘拐事件の解決も、若干冤罪臭かったりする。
フーバーは、「アメリカを共産主義者から守る」という大義名分を掲げ、大統領を盗聴して脅したりしながら、どんどん権力を拡大していく。彼は常に強い愛国心から行動している。己の欲望の為に滅茶苦茶してる訳では無いからか、どこか憎めなかったりする。そして、この映画の肝はそこにある。
この時代の空気、彼の危機感は、9.11以降のアメリカそのままだ。対テロという大義名分によって暴走する、現在のアメリカと重ね合わさるように、フーバーという一人の気弱な愛国者の姿が、滑稽に描き出されていく。
政治ドラマとしては、少々地味で散漫な印象があったけど、同性愛者でもあったフーバーのプライベートの部分は、相当楽しめた。特殊メイクで70代の姿になったディカプリオと、アーミー・ハマーが、プルプル震えたりしながら、ゲイカップルを熱演している。
はっきり言って、メインプロットである政治ドラマよりも、ゲイの純愛描写の方が力が入っている。一見コントのようにも見えるのに、感動的という不思議な満足感があった。
ディカプリオの新たな一面を存分に堪能出来るので、現代アメリカ史に興味の無い人にもオススメです。
カーチェイス、飛行機の急降下シーン、剣劇シーン、重機によるバトル、すべてのアクションシーンが見所になっている。船上の場面も多く、多少3D酔いしてしまったけど、スクリーンから目を離す隙のない、とてもエネルギッシュな映像作品だった。


●監督:クリント・イーストウッド
●出演:レオナルド・ディカプリオ、ナオミ・ワッツ、ジュディ・デンチほか。
●上映時間:2時間17分
●配給:ワーナー・ブラザース映画

【イントロダクション】
あなたは知っていただろうか。約50年近くもの間、アメリカで大統領さえ及ばない強大な権力を手にした男がいたことを。そのたった一人の人間が、アメリカ中のあらゆる秘密を掌握し、国さえも動かしていたという事実を。男の名は、ジョン・エドガー・フーバー。FBI初代長官。20代にしてFBI前身組織の長となり、以後、文字通り死ぬまで長官であり続けた男だ…。

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