2012年3月1日 [施川ユウキ映画コラム]

施川ユウキ映画コラム「全ての映画は、ながしかく」第50回 マネーボール

第50回「マネーボール」

実話を元にした作品としては、同じ製作陣の「ソーシャル・ネットワーク」を思い出す。テンポのいい演出や、濃いキャラクター等、類似点はあるものの、本作品の主人公は、ザッカーバーグのように謎めいた人物としては見せず、一人の人間として深く掘り下げて描いている。

ブラピ演じるGM(ゼネラルマネージャー)ビリーは、大成しなかった元選手だ。妻には逃げられ、最愛の娘とはたまにしか会えず、敗北感を常に抱えている。その上、自分の球団のスター選手はどんどん資金のあるチームに取られて、仕事の面でも崖っぷちだ。  
そんなビリーが、経済学部出の若者ピーターと出会い、彼の語る常識破りの「マネーボール理論」に全てを賭ける。「○○理論」と聞くと、理性的な人物像が浮かぶが、ビリーは感情的で気が短い。自分の球団の試合も見に行かず、中継しているラジオのスイッチを一瞬入れて消してを繰り返し、負けがわかるとラジオをぶっ壊す。短気だが、一度決めたら決してブレない。チームは負けまくり、マネーボール理論は世間からオカルト扱いされる。  
だが、ビリーは自分を貫く。なぜ信じ続けるのか不思議なくらい、何が何でも貫く。その執念が、やがて奇跡を起こすことになる。                            
この野球映画に、試合の場面はほとんど無い。代わりにGMの戦場で、息もつかせぬ攻防が繰り広げられる。
例えば、選手の売り買いやトレードの交渉を電話で行うシーン。秒単位の駆け引きを、猛スピードでこなしていて、思わず手に汗握る。試合に関わる権限の無い彼が、自分のビジョン実現の為になりふり構わず闘う姿も見応えがある。      
一歩間違えば変人の負け犬だが、結果的に彼は成功し伝説になった。
人生で大きな決断を踏み切らないといけない局面で、観返したい作品だ。


●監督:ベネット・ミラー
●出演:ブラッド・ピット、ジョナ・ヒル、フィリップ・シーモア・ホフマンほか。
●上映時間:2時間13分
●配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント

【イントロダクション】
選手からフロントに転身し、若くしてメジャーリーグ球団アスレチックスのゼネラルマネージャーとなったビリー・ビーン。ある時、イェール大経済学部卒のピーターと出会い、彼が主張するデータ重視の運営論に、貧乏球団が勝つための突破口を見出す。そして、周囲の反対を押し切って、後に『マネーボール理論』と呼ばれる戦略を実践していくことに…。

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