2011年12月1日 [施川ユウキ映画コラム]

施川ユウキ映画コラム「全ての映画は、ながしかく」第47回 ツリー・オブ・ライフ

第47回「ツリー・オブ・ライフ」

テレンス・マリックと言えば、普通のハリウッド映画とは一線を画した、極端に観念的な作風が持ち味の伝説的映画監督だ。
今回も、それは健在で、独特の哲学的世界観をクラクラするほど堪能することができる。

本作には、観客を引っ張るほどの物語性は無い。
スクリーンに映しだされるのは、宇宙や大自然の映像と、テキサスに暮らす、古き良きいち家族の日常。その上に、神に問いかけるような宗教的モノローグが重ねられる。
観客は、そのノスタルジックな家族に自分自身を見る。
すると不思議なことに、我々が繰り返している日常が、まるで神話か何かのように思えてくるのだ。
よく、「宇宙の壮大さを思うと身近な悩みがちっぽけに思える」とか言われるが、この映画の場合、平凡な家族が抱える厄介事と、宇宙の壮大さが等しく美しいモノとして並列している。
日常の悩みをちっぽけにするのではなく、宇宙規模に拡大させ神聖化しているのだ。
日常と宇宙を結びつける理屈はとくに無い。
繋いだ映像のセンスだけで説得させられる。その余りの美しさに屈服してしまう。
この映画は、一生に何度も観るようなタイプの作品ではないかもしれない。
だが、覚悟を決めて入り込むことが出来れば、味わったことのないような神秘的な体験を得られるかもしれない。
本作を評して「2001年宇宙の旅」以来の傑作であると言う人もいれば、「意味不明で退屈な映画」であると言う人もいる。
映画を観ている間、自分は、両方の心境を行ったり来たりして、観賞後、グッタリとしてしまった。
とんでもない映画であることは確かだ。


●監督:テレンス・マリック
●出演:ブラッド・ピット、ショーン・ペン、ジェシカ・チャステインほか。
●上映時間:138分
●配給:ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン
【イントロダクション】
成功した実業家であるジャックは人生の岐路に立ち、遠い少年時代を回想する。力こそが全てだと信じる厳格な父と、純粋すぎるほどの愛に満ちた母との狭間で葛藤し、父への反感を募らせていた無垢な日々。暗黒の淵にとらわれそうな彼の心を、光のさす場所に留めたものは何だったのか? “あの頃”に再び思いを巡らす時、すべてを乗り越えつながり続ける家族の姿に、ジャックは過去から未来へと受け継がれていく生命の連鎖を見いだす…。

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