2011年9月1日 [施川ユウキ映画コラム]

施川ユウキ映画コラム「全ての映画は、ながしかく」第44回 アンノウン

第44回「アンノウン」

リーアム・ニーソン演じる主人公の植物学者ハリス博士は、学会出席のため、妻と訪れたベルリンで交通事故に遭う。
4日間の意識不明の末、妻の元へと戻るものの、妻はハリス博士を称する別の男を夫として伴い、ハリス本人の事を「見ず知らずの赤の他人」と言い張るのだった…! 一体何が起こったんだ!?

サスペンスの冒頭としては、一気に引き込まれる素晴らしい設定だ。「自分が何者かわからない主人公が謎の組織に追われる、異国を舞台にした観光映画」としては、ボーンシリーズを彷彿させる。だがハリスは、敏腕工作員のジェイソン・ボーンと違って、ただの植物学者だ。恐らくジリジリと精神的に追い詰められる展開が続くのだろう…と思いきや、途中から格闘ありカーチェイスありのバリバリアクションものになる。リーアム・ニーソンはアクション俳優でもあるので、普通に受け入れてしまうのだけど、冒頭が非常に丁寧で繊細なサスペンス演出をしていた事もあって、少し拍子抜けした。普通にアクションサスペンスだとわかって観ていれば、「待ってました!」って感じの展開だ。前半鬱屈していた分、より気持ち良く楽しめると思う。リーアム・ニーソンが、常に憂いを含んだ表情をしているので、もっさりしたジェイソン・ボーンのようにも見えてくる。ボーン以降、アンジェリーナ・ジョリーの「ソルト」や「ザ・ツーリスト」みたいに、身元不明主人公のアクションサスペンスが流行っていて、本作もその流れにある映画なのだろう。
全ての謎が解けるのが意外と早く、その後ひと盛り上がりする展開が待っている。クライマックス部分は、100%純粋なアクション映画だ。冒頭の、不穏さを湛えつつ、知的で落ち着いた雰囲気とは180度違う終盤に、制作サイドの割り切った姿勢が伺えて面白い。謎で引っ張るタイプの映画は、謎が解けると大抵ガッカリしてテンションがガクッと下がるけど、この映画は、「まあ待て、この後が面白いんだよ!!」って頑張っていて、好感が持てる。
賛否は分かれるかもしれないが、自分はスカっとした気分で劇場を出る事ができて、良かった。

●監督:ジャウム・コレット=セラ 
●出演:リーアム・ニーソン、ダイアン・クルーガー、ジャニュアリー・ジョーンズほか。
●上映時間:1時間53分 ●配給:ワーナー・ブラザース映画
【イントロダクション】
交通事故に遭ったマーティン・ハリスが意識を取り戻すと、妻は夫である自分の顔を覚えておらず、見ず知らずの男が自分になりすましていた。警察に訴えても信じてもらえず、殺し屋に狙われるはめになったマーティンは街中を奔走し、虚実が交錯する危険に巻き込まれていく。思わぬ形で協力者を得たマーティンは、この謎に足を踏み入れる決意をするが、やがて自分自身の正気に疑いを抱くようになる。

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