2011年6月1日 [施川ユウキ映画コラム]

施川ユウキ映画コラム「全ての映画は、ながしかく」第41回 ヒア アフター

第41回「ヒア アフター」

 イーストウッド監督、スピルバーグ製作総指揮、2つのビッグネームを聞いて、とにかく何も情報を入れずに楽しもうと思い、渡された資料も一切読まず、鑑賞に臨んだ。

 冒頭でいきなり、大津波に飲まれる主人公らしき女性。強烈な映像。度肝を抜かれた。「パニック映画なのか?」と思ったら、津波はあっさり終わり、舞台が移ってマット・デイモンが登場。いきなり死後の世界を霊視する。「こっちが主役か!マットが特殊能力で活躍するヒーロー物か」と思ったら、また場面が変わり、双子の子供の話に。突然兄が車に轢かれるというショッキングシーン。そして再び女性の話、マットの話、子供の話…。段々映画の設定が分かってくる。パリ、サンフランシスコ、ロンドンを舞台に、「死後の世界」に取り付かれた三人の、それぞれの孤独を静かに描いていく、大人向けヒューマンドラマだ。設定が明かされてからは、淡々と抑制された雰囲気で、ゆっくりと物語が前進していく。見ようによっては退屈な話なんだけど、設定を見せる前半20分が、とにかく引き込まれる作りになっていたので、以降も没頭して観る事が出来た。
 「先の見えない展開!」とか物語を評する時よく使われるが、この映画はゴールが見える。「この孤独な三人が出会う事が出来れば、彼らは救われるのに…っていうかそんな感じのラストなんだろ!早く見せろ!」と思いながら観客は観る事になる。ゴールが見えるのは、脚本にとって実は大事な事だ。観る者が混乱せず、安心して場面場面で登場人物の感情に向かい合う事が出来る。逆に「先が見えない展開」の物語は、引っ張る事が出来るのでテレビドラマには向いているものの、その代わり観る側は状況把握が優先される為、複雑な感情の表現だと入り込みにくい。この映画の特徴は、「先の見えない怒涛の冒頭」と、以降の「見えてるゴールに向かって、じっくり進む展開」という極端な構成にあると思う。「死後の世界」という非日常的なテーマに見えて、中心に描かれるのは、誰もが身に覚えのある孤独と救済だ。何となく想像のついていたラストに、それでもやはり感動する。

●監督/製作/音楽:クリント・イーストウッド
●出演:マット・デイモン、セシル・ドゥ・フランス、ジェイ・モーア、ブライス・ダラス・ハワード、ほか。
●上映時間:129分 ●配給:ワーナー・ブラザース映画
【イントロダクション】
パリのジャーナリスト、 マリーは、 休暇で訪れた先で津波にのまれ死にかける。 帰国後も呼吸が停止した時に見た光景が忘れられず、 突き止めようと調査を始める。 かつての霊能者ジョージは、 死者との対話に疲れサンフランシスコの工場で働いている。 ロンドンで暮らす小学生マーカスは、 亡くなった双子の兄と話したいと霊能者を訪ねる中で、 ジョージの古いウェブサイトに行きあたる。 3人の人生が交錯しようとしていた。

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