2020年10月1日 [施川ユウキ映画コラム]

施川ユウキ映画コラム「全ての映画は、ながしかく」第151回 三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実

第151回「三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実」

三島由紀夫作品は遠い昔に有名どころをいくつか読んでいるだけだったし、全共闘についてもどこかで観たドキュメンタリー映像で知った程度の知識しかない。そんな自分でも、思いのほか楽しめた映画だった。
作中繰り広げられる討論そのものは、難解な言葉が多く、正直何を話しているのかよくわからない場面が多かった。それでもまったく退屈しなかったのは、三島と彼の論敵として現れる学生(主に芥正彦)のキャラクターがどちらも立っていたからだ。麻雀マンガや将棋マンガは、ルールがわからなくてもキャラを理解できればそれなりに楽しめるものだけど、この映画もキャラとキャラ同士の作る緊張感が伝われば、問題なく観れると思う。

ユーモアを交えながら敬意を持って学生と対峙する三島。表情も厳しかったり柔和だったり豊かで、いかにも主役然としたオーラをまとった強キャラだ。一方芥正彦も、幼い娘を肩車して登場するという謎演出からの、「三島さんは敗退してしまった」という挑発的発言。観念的な議論を、むき出しの敵意で吹っ掛ける。相手の話にちゃんと合わせようとする三島は大人だ。皆壇上でタバコを吸っていることに時代を感じた。
当時の映像の合間に、関係者たちのインタビューが入る。元全共闘でも、のちに社会へ出てそれなりに出世してる人は遠い昔話として語るのだけど、前衛劇団を主宰し未だ社会に対してファイティングポーズをとり続けている芥は、昨日のことのように振り返っていて面白い。話す言葉も変わらず観念的で、五十年経った今も三島をライバル視している。歳を重ねた今の方がむしろキャラが立って見えた。
討論の一年後、三島は市ヶ谷で自決。諸々の事件を経て政治の季節は終わっていく。
インタビューの最後、全共闘運動の総括について問われた当事者たちの答えは皆、歯切れが悪かった。監督はこの質問を質問表に入れていなかったそうだ。三島の色褪せないスーパースターっぷりが印象に残る、三島由紀夫の映画だった。

●監督:豊島圭介 ●企画プロデュース:平野隆 ●ナレーション:東出昌大
●出演:三島由紀夫、芥正彦、木村修、橋爪大三郎、篠原裕、宮澤章友、原昭弘、椎根和、清水寛、小川邦雄
●上映時間:108分 ●配給:ギャガ

【イントロダクション】
禁断のスクープ映像の封印が遂に解かれた。三島由紀夫と反逆のエリート東大全共闘の討論会の全貌だ。時は1969年、三島が衝撃の自死を遂げた前年。学生運動が激化していた東大駒場キャンパスでは1000名を超える学生が「三島を論破して舞台の上で切腹させる」と異様な緊張が充満していた。一方の三島は、警察が申し出た警護も断わり、その身一つで敵地へと乗り込んだ。13人の証言者たちが、あの日、あの熱を語る衝撃のドキュメンタリー。

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