2011年4月1日 [施川ユウキ映画コラム]

施川ユウキ映画コラム「全ての映画は、ながしかく」第39回ウォール・ストリート

第39回「ウォール・ストリート」

 オリバー・ストーンは、僕が最も好きな映画監督の一人だ。
 今回、23年ぶりに名作「ウォール街」の続編が公開されると聞き、かなり関心を持って鑑賞に臨んだ。ウォール街を舞台に繰り広げられる、血で血を洗うマネーゲーム。それを一歩引いた立場で静観しつつ、虎視眈々と復活を目論んでいる伝説の投資家、ゲッコー。投資銀行に務める青年ジェイコブ。その恋人でゲッコーの娘でもあるウィニー。物語は、ジェイコブが父親のように慕っていた経営者を自殺に追い込んだブレトンへの復讐劇と、ジェイコブがゲッコーとウィニーを和解に導く家族ドラマ、その両方が並行して描かれていく。

 ゲッコーを演じるマイケル・ダグラスの存在感は圧倒的だ。前半ゲッコーはほとんど活躍していないのにも関わらず、金融業界のゴタゴタよりも、彼の家族の再生話に興味を向けさせられた。中盤の、大恐慌以来と言われる金融パニックも、ゲッコーが関与していないからなのか、それほど感情移入して見られない。
ただ、ドロドロした狭い金融業界が混乱する様子や、ブレトンが転落していく様はやはり痛快で、見ごたえがあった。
 主人公は、一応ジェイコブで、休みなくバタバタ奮闘してるんだけど、個人的にゲッコーへの思い入れが強いせいもあってか、全てがサイドストーリーに見えてしまった。ジェイコブは、ゲッコー相手にマネーゲームでガチンコ勝負して欲しかった。
 オリバー・ストーン監督作品には、熱い演説シーンがよく出てくる。今回も大学でゲッコーが講演をするシーンが用意されている。しかし、諦観を含んだ冷めたトーンのビジネス的な演説だ。それは、後半で金融の世界へカムバックする伏線になっているのだが、結局最後まで彼は、金儲けに対して冷めているように見えた。勝利する姿がどこか寂しげなのだ。ゲッコーも、最終的には仕事以外に救いを求める、弱さを持った一人の人間だ。ラスト、彼に与えられた「赦し」は、少しご都合主義的で、奇妙にすら思える。それは、ゲッコー同様歳を重ねた監督が、どうしても描きたかった甘い奇跡なのかもしれない。

●監督:オリバー・ストーン●出演:マイケル・ダグラス、シャイア・ラブーフ、ジョシュ・ブローリン、キャリー・マリガン、スーザン・サランドンほか●上映時間:2時間13分 ●配給:20世紀フォックス映画
【イントロダクション】
若き投資家ジェイコブの順風満帆な人生はたった一日で崩壊した。勤める会社の経営破たんによりそれまでの資産や上司を失ったのだ。経営破たんの黒幕に、巨大マネーを動かす強欲な男ブレトンがいると知ったジェイコブは復讐を誓い、最愛の婚約者の父親であり刑務所を出たばかりの元カリスマ投資家ゲッコーを計画に利用しようとする。復活を目論むゲッコーとジェイコブ、二人の人生をかけたゲームが幕を開ける。

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