2011年3月1日 [施川ユウキ映画コラム]

施川ユウキ映画コラム「全ての映画は、ながしかく」第38回 ソーシャル・ネットワーク

第38回「ソーシャル・ネットワーク」

 感動的な展開とかは何も無い。だが、面白くて目が離せない映画だった。
 ソーシャル・ネットワーキング・サービス「フェイスブック」を19歳で作り、数年で5億人の利用者を抱え、最年少億万長者になった、マーク・ザッカーバーグの成功譚。本作の基本プロットはそれなんだけど、ややアクロバティックな見せ方で、彼の成功は語られる。成功後、彼は身内に訴えられる。原告、被告、弁護士達の話し合いの席と、そこで遡りながら証言される彼のサクセスストーリー、この2つの時間軸で、映画は構成されている。

 その語られる物語だが、非常に単純で、めくるめくドラマやロマンスも無く、はっきり言うとチープだ。数十万人の利用者とか、数百万ドルの評価価値とか、数字はどんどんでかくなっていくけど、本当にただの数字で、実感がわかない。マークは成功していくが、彼の内面で何かが大きく変わっていく事も無く、格好もみすぼらしいままで、人間的成長も見られない。そして、どうやら彼は、ずば抜けた才能を持ったカリスマ的天才でも無いらしい。と言うか、「付き合いづらい、ただの嫌な奴」という性格面ばかりがクローズアップされていく。この映画は、それらの事実を暴くスキャンダル映画なのだ。
 この映画を観ていると観客は、後に彼を訴える、親友で共同創業者のエドゥアルドに、感情移入するだろう。そしてクライマックスの、マークがエドゥアルドを裏切るくだりで「オマエは最も大切な友人を失った!一生後悔するだろう!」と、憤りを覚えるだろう。だが不思議な事に、最後までマークは後悔する様子を見せない。彼は始めからエドゥアルドを親友だと思っていなかったし、そもそもよくわかっていないのだ。人間関係というものが。他人の気持ちを忖度できない彼が、世界最大級のコミュニケーションサービスを創り上げたという皮肉な現実。
 マークは、他人を踏みつけて億万長者になったが、お金には大して執着していない。彼が執着していたのはフェイスブックだ。人間関係という謎がさっぱり分からないまま、コミュニケーションサービスの運営に腐心する孤独な彼の姿は、哀れでコミカルで、どこか憎めない。


監督:デヴィッド・フィンチャー 脚本:アーロン・ソーキン 出演:ジェシー・アンゼンバーグ、アンドリュー・ガーフィールド、ジャスティン・ティンバーレイク、ルーニー・マーラ ほか
上映時間●2時間 配給●ソニー・ピクチャーズ エンターテインメント

【イントロダクション】
2003年、ハーバード大学に通う19歳の学生マーク・ザッカーバーグは、親友とともにある計画を立てる。それは学内で友達を増やすため、出来事を自由に語り合えるサイトを作ろうというものだった。サイトは瞬く間に学生たちの間に広がり、ついには社会現象を巻き起こすほどに成長を遂げ、彼らは若くして億万長者へと成り上がって行く。だがそこには最初の理想とは大きくかけ離れた孤独な自分がいた。

PAGE TOP