2020年5月1日 [施川ユウキ映画コラム]

施川ユウキ映画コラム「全ての映画は、ながしかく」第147回 ジョジョ・ラビット

第147回「ジョジョ・ラビット」

戦時下のドイツ。主人公は、ナチスを信奉し「想像上の友達」にヒトラーを持つ10歳の少年ジョジョ。自宅にひそかに匿われていたユダヤ人少女との出会いを通じて、彼が内面的に成長していくビルドゥングスロマンだ。
冒頭、ジョジョはユーゲントキャンプ参加のため、ハイテンションで家を飛び出し、資料映像に合わせてビートルズの「抱きしめたい」が軽快に流れる。皮肉の利いたポップなオープニングだ。ジョジョはけっして「悪の子供」ではない。純粋で真面目で、合宿中にウサギも殺せない。純粋だからこそ、国家のプロパガンダをそのまま信じてしまっている。そして父親不在の寂しさを埋めるように空想のヒトラーとたわむれている。一方母親は、国家へのレジスタンス活動に励む聡明で明るい女性だ。ヒトラーに心酔する息子を心配しつつ、自分の活動に巻き込まないよう努めている。彼女は、ジョジョに子供じみたいたずらをしたり、父親の形態模写をしたり、歌ったり踊ったりもする。ジョジョの想像するマンガチックなヒトラーは、国家の宣伝と母親のユーモアが合わさってできたキャラクターなのかもしれない。彼女が自宅でこっそり匿っていたのが、ユダヤ人の少女エルサだ。ジョジョに見つかってしまい、ドラマが動き出す。

基本的にはコメディ映画だ。エルサは美しく、やたら強い。普通ならジョジョから脅される側なのに、「私を通報したら母親も処刑される」と上からガンガン脅してくる。もちろん彼女も必死なのだけど、ジョジョがビビりまくっているのがほほえましい。緊張感とのバランスが絶妙だ。
物語は、ほぼジョジョ視点で描かれる。彼の目線では、ヒトラーは恐怖で支配していない。クールで頼もしい友達の顔をしているのだ。母子の関係性では、子供の目線ならではの「靴」を使った演出が印象的だった。笑って泣けるエンタメ映画でもあるけど、国家が暴走する恐ろしさもしっかり描かれた、メッセージ性の強い作品だ。

●監督・脚本:タイカ・ワイティティ
出演:ローマン・グリフィン・デイビス、タイカ・ワイティティ、スカーレット・ヨハンソン、トーマシン・マッケンジー、サム・ロックウェル、レベル・ウィルソン 他
●上映時間:109分 ●配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン

【イントロダクション】
第二次世界大戦下のドイツ。心優しい10歳の少年ジョジョは、空想上の友達であるアドルフ(・ヒトラー)の助けを借りながら、立派な兵士になろうと奮闘していた。ある日、母親とふたりで暮らしていたジョジョは、家の片隅に隠された小さな部屋で、ユダヤ人の少女が匿われていることに気づいて――。

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