2020年4月1日 [施川ユウキ映画コラム]

施川ユウキ映画コラム「全ての映画は、ながしかく」第146回 パラサイト 半地下の家族

第146回「パラサイト 半地下の家族」

カンヌ国際映画祭でパルムドールを獲った大評判の本作。『万引き家族』、『ジョーカー』、『アス』等、格差や貧困の問題を描いた傑作が次々と作られているが、『パラサイト』もそのひとつだ。カンヌで受賞と聞くと、娯楽作品というより芸術作品の印象が強い。本作は両方をあわせ持った、万人に勧められる一作だ。ポン・ジュノ監督の集大成と呼べるかもしれない。
半地下のアパートに暮らす全員失業中の低所得家族。酔っ払いの立ちションが窓から流れ込みそうになるような劣悪な環境で生活していながら、彼らは皆スマホだけは持っていたりする。近所の家のWi-Fiにただ乗りしていたらパスワードを掛けられてしまい、別のWi-Fiをギリギリ拾うためにトイレの天井辺りまでスマホを持っていかないといけない。現代的な貧困描写だ。この映画は、サスペンスだったりシリアスな人間ドラマだったり色んなジャンルを横断しているが、基本的にはコメディだ。皮肉にあふれ、テンポも良く、長尺でありながら退屈する場面がひとつも無い。

貧乏一家の長男ギウは、ひょんなことから超裕福なパク氏の豪邸で家庭教師の仕事を得る。そして兄に続き妹ギジョンも美術の家庭教師として豪邸に……。本作最大の魅力はツイストの効きまくったストーリー展開なのだけど、ネタバレ厳禁のため序盤以降語ることができない。
ふたつの家族の対比で面白いのは、金持ち一家は善良で、人間的にも理想を体現しているというところだ。『万引き家族』でも描かれるように、貧乏一家は善良では生きていけない環境にいる。
具体的には書けないが、クライマックスに「持てるもの」と「持たざる者」を決定的に分かつ、悲しい瞬間がある。悲劇と喜劇が入り混じった凄みのあるシーンだ。笑えるし泣けるし恐怖した。
格差の問題とは社会が分断されることであり、貧困の問題とは人間の尊厳が脅かされることだ。そんな感想を持ったが、言葉にすると陳腐に思える。他人の感想など読まずに観るべき作品だろう。……すみません。

●監督:ポン・ジュノ
出演:ソン・ガンホ、イ・ソンギュン、チョ・ヨジョン、チェ・ウシク、パク・ソダム、イ・ジョンウン、チャン・ヘジン  他
●上映時間:132分 ●配給:ビターズ・エンド

【イントロダクション】
全員失業中、“半地下”住宅で暮らす貧しいキム一家。長男ギウは、ひょんなことからIT企業を経営する超裕福なパク氏の家へ家庭教師の面接を受けに行くことになる。そして、兄に続き、妹ギジョンも豪邸に足を踏み入れるが…。この相反する2つの家族の出会いは、次第に想像を遥かに超える悲喜劇へと加速していく――。

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