2019年10月1日 [施川ユウキ映画コラム]

施川ユウキ映画コラム「全ての映画は、ながしかく」第140回 シャザム!

第140回「シャザム!」

マーベルと対照的に、陰気なノリで今ひとつパッとしなかったDC映画が、少し前から方向性を変え、ワイルドで快活な『アクアマン』で大爆発。DC映画史上最大のヒットを記録しているという。本作『シャザム!』は、DCの陽キャ路線にふさわしい、笑いあり涙ありの、エンタメヒーロー映画だ。
身寄りのない悪ガキビリーは、里子たちを抱えるバスケス家にやってくる。しかし一家に心を開くことはなく、生き別れの母親を見つけることだけが生きる目的だ。ある日スーパーパワーを手に入れシャザムとなったビリー。彼の成長物語が、本作の基本プロットになっている。

ビリーと同室で暮らす少年フレディ。障害を持ち松葉杖をついているが、暗い顔を見せず常にジョークを飛ばしているフレディはスーパーマンやバットマンに憧れているが、彼の心の強さこそ真のヒーローに通じているように見えた。(皮肉を言うと、これまでザック監督が描いてきた陰鬱なスーパーマンやバットマンでは、現実にDC映画は救えなかった)。
映画前半の最も心躍るくだりは、シャザム姿のビリーとフレディが自分の能力を調べるため妙な実験をしたり、ビールを飲んだり悪ノリしまくるシーンだ。危なっかしくてほほえましくて楽しい。ビリーはシャザム姿でいる方が開放的で、むしろ子供らしい。
一方悪役のDr.シヴァナ。少年時代のある事件をきっかけに悪落ちするが、元々彼が抱えていた問題はビリーと同じく「家族」にある。シヴァナは、「選ばれなかった子供」として欠落感を克服できないまま大人になり、ヴィラン(悪)となった。シャザムに選ばれたビリーもまた、力を得ただけでは欠落感を埋めることはできない。ヒーローにもなれない。自分を取り巻く環境を受け入れ、人生を受け入れ、前に踏み出さなくてはいけないのだ。コメディだと油断していたら、終盤の激アツな展開に、普通に泣いてしまった。
この先、彼がジャスティスリーグの一員となって、フラッシュ辺りと軽妙な絡みを見せるのか今から楽しみだ。

●監督:デビッド・F・サンドバーグ
●出演:ザッカリー・リーヴァイ、アッシャー・エンジェル、ジャック・ディラン・グレイザー、マーク・ストロング 他
●上映時間:132分
●配給:ワーナー・ブラザース映画

【イントロダクション】
思春期の少年、ビリーは、ある日突然「選ばれし者」として魔術師からスーパーパワーを手に入れる。「シャザム!」という魔法の言葉を唱えれば、スーパーヒーローに変身できるのだ。相棒のヒーローオタクであるフレディと一緒に、スーパーマンにも負けない怪力をあちこちで試したり、稲妻パワーを携帯の充電にムダ遣いしたりと悪ノリ全開。そんな中、正体不明の科学者シヴァナが現れ、ビリーは「シャザム」の力を狙われることに。フレディがさらわれ、ビリーはついにヒーローとして目覚める――。

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