2019年9月1日 [施川ユウキ映画コラム]

施川ユウキ映画コラム「全ての映画は、ながしかく」第139回 ビューティフル・ボーイ

第139回「ビューティフル・ボーイ」

『君の名前で僕を呼んで』のティモシー・シャラメ主演、ドラッグにハマった青年ニックと、彼を更正させようと奮闘する父親の物語。スティーブ・カレル演じる父の視点で、息子を理解し支えようと苦闘する様子が静かなタッチで描かれ、胸に迫る。
ニックは成績優秀でスポーツもでき、父親との関係も良好、正にビューティフル・ボーイだ。しかしどこか満たされない穴を埋めるように日常にドラッグが入り込み、やがて人生が奪われていく。更生施設を抜け出し再発を繰り返すニック。終わりの見えない闘いに疲弊していく父親。実話を元にしているだけに、ひたすら生々しい。物語は地味で、大きな展開はないが、ティモシーの美しさと演技に魅せられっぱなしで退屈することはなかった。ニックの恋人(兼、ドラッグ仲間)も美人なのだけど、正直ニックの方がかわいく見えてしまう。映像は美しく演出も繊細で、所々サスペンスフルだ。順調に薬抜きを成功させ施設から一時帰宅し、幼い弟と海で遊ぶシーン。やりすぎない微妙な不穏さでザワザワさせられる。(ここで弟が海難事故に遭い、再びドラッグに手を出すのでは?)みたいなことを想像してしまった。しかしそんなわかりやすいドラマチックな悲劇がなくとも、元依存者は簡単に薬へと戻ってしまう。そもそも最初に手を出したきっかけも軽いものだ。

父親の視点で時折子供時代のニックの映像が挟み込まれて、そこがまた胸を締め付ける。家に忍び込んだニックが、父の再婚相手に車で追いかけられるシーンも、痛々しくて見てられなかった。彼は悪人ではないし家族への愛も本物だ。ドラッグの依存を自己責任だけで片付けるのは問題があるし、罰するより治療に力を入れられる社会が理想なのだというメッセージが、作品全体に込められている。かと言って説教臭さはなく、センセーショナルでもない。
「時々息子を見つめて思うんです。知り尽くしたはずなのに〝この子は誰だろう?って」
冒頭で父親がカウンセラーに語るセリフが印象に残った。

●監督:フェリックス・ヴァン・ヒュルーニンゲン
●出演:スティーブ・カレル、ティモシー・シャラメ 他
●上映時間:120分 ●配給:ファントム・フィルム

【イントロダクション】
成績優秀でスポーツ万能、将来を期待されていた学生ニックは、ふとしたきっかけで手を出したドラッグに次第にのめり込んでいく。更正施設を抜け出したり、再発を繰り返すニックを、大きな愛と献身で包み込む父親デヴィッド。再生への旅はまだ始まったばかり…。愛のちからで人は変わることができるのか、私たちが最後に目にするものは、一筋の希望のひかり。

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