2019年7月1日 [施川ユウキ映画コラム]

施川ユウキ映画コラム「全ての映画は、ながしかく」第137回 移動都市/モータル・エンジン

第137回「移動都市/モータル・エンジン」

家々が折り畳まれ黒煙を吹き出しながら走り出す小さな岩塩採掘都市。後方から、渓谷のような轍を作りながら轟音とともに迫りくる大都市ロンドン。街の財産でもある積み荷の岩塩を全て荒野に捨て、速度を上げて逃走する採掘都市。追いかけながら巨大なアンカーを幾つも打ち出す大都市ロンドン。ミサイルが着弾するように、アンカーに貫かれる採掘都市。大興奮のロンドン市民。アンカーの鎖が巻き取られ、大都市ロンドンのボトム部分に開かれた開口部にズルズルと引き込まれる採掘都市。バクっとひと飲みする大都市ロンドン。口を閉じると現れる、ユニオンジャックが描かれた巨大扉。塗料は経年劣化で禿げかけている。そこに大きく映し出されるタイトル「Mortal Engines」。

とにかく素晴らしいオープニングだった。「都市が都市を喰う」っていう、言葉だけではイメージしにくいハチャメチャな発想を、見事に分かりやすく最高の見せ方で映像化していて、完全にノックアウトされた。単に都市が都市を吸収するのではなく、モンスター映画の捕食シーンのように演出している。ちなみに喰われた都市の住民は、ロンドンの下層市民的立場で働かされる。喰われた都市部分は、胃袋で消化されるように解体工場で巨大な圧砕機や丸ノコで都市ごとバラバラにされる。
冒頭の映像話で紙幅を使いまくったが、他にも巨大重機やら空中都市やら大規模破壊兵器やら、同じように力の入った見どころシーンは満載だ。しかし、この作品の世界観を象徴するのはやはりオープニングで、とにかくインパクトがあって良かった。『ハウルの動く城』とか『進撃の巨人』とか『マッドマックス 怒りのデスロード』とか、それらをうろ覚えのまま全部足したみたいな感じだ。
ちなみに物語は、戦争で荒廃した未来世界を舞台に、悪い奴から逃げたりやっつけたり、ロンドンに隠された秘密を解いたりする、ファミリー向け王道のアクションエンタメです。巨大スクリーンで観るのがオススメ。

●監督:クリスチャン・リヴァーズ ●製作:ピーター・ジャクソン ●原作:フィリップ・リーヴ著 /安野玲 訳「移動都市」(創元SF文庫刊)
●出演:へラ・ヒルマー、ロバート・シーアン、ヒューゴ・ウィーヴィング、ジヘ、ローナン・ラフテリー、レイラ・ジョージ 他
●上映時間:2時間9分 ●配給:東宝東和

【イントロダクション】
たった60分で文明を荒廃させた最終戦争後、残された人類は移動型の都市を創り出し、他の小さな都市を駆逐し、捕食しながら生き続けるという新たな道を選択した。地上は“都市が都市を喰う”、弱肉強食の世界へと姿を変え、世界は巨大移動都市・ロンドンによって支配されようとしていた。いつ喰われるかもしれない絶望的な日々の中、その目に激しい怒りを宿した一人の少女が反撃へと動き出す。

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