2011年2月1日 [施川ユウキ映画コラム]

施川ユウキ映画コラム「全ての映画は、ながしかく」第37回 リミット

第37回「リミット」

 目覚めたら土に埋められた棺の中にいて、延々その状況のまま物語が進む。いわゆるワンシチュエーションスリラーと呼ばれるジャンル映画だが、ここまでの八方塞がり感は究極かもれない。主人公ポール・コンロイは体の向きを入れ替えることすら出来ない。

 予告を観た時は、「最後までこの状況のまま進んでいったら面白いけど、さすがに途中から棺の外に舞台が変わるだろうな…」とタカをくくっていた。ところが驚くべき事に、ワンシチュエーションを演出的にも最後まで貫いていて、カメラは外側を一切映さないし、回想シーンすら皆無だ。この映画で極限状況と戦っているのは、ポールだけでは無い。身動きが取れない中、飽きさせる事無く、見事に映画を成立させていく監督自身が、もう一人の主役だとも言える。そして、ポールが勝利したかどうかは書けないが、監督自身は実に意地悪な、賛否の分かれる勝ち方を、最後の最後で見せてくれる。「ハリウッドらしくないな」と思ったら、これはスペイン映画らしい。ライアン・レイノルズが主役だから勘違いしていたが、そこがトリックだったような気すらしてくる、憎たらしい作品だ。
 具体的なストーリーに関しては、取り立てて書くような凄い展開は無かったりする。しかし、演出部分は実に巧みだ。例えば、照明の代わりになるアイテムが、ジッポや携帯のバックライト等、約5種類用意される。暗闇を含めると6種類だが、ジッポの揺らぎや、ライトの点滅や、消えていくサイリウムの効果等を加えたら、相当豊富だ。それらを使い分けながら、絵面をリズミカルに変化させ、状況を動かしていく。状況が進展していなかったとしても、主人公の心理的な推移を画面に反映させていく。映画的で見ごたえのある演出だ。ところで鑑賞中、意外に感じた事が一つあった。こんな状況見続けたら、閉所恐怖症的な不安がどんどん加速していくのだろうと思っていたのだが、「狭さ」のみに限定すれば、後半慣れている自分がいた。普段異常に狭い部屋で暮らしているので、傍から見たら「リミット」的状況で生活してるのかもしれない。そんな妄想もさせられる作品だった。

監督:ロドリゴ・コルテス 
出演:ライアン・レイノルズ 
上映時間●95分 配給●ギャガ

【イントロダクション】
イラクで民間トラック運転手として働いていた米国人ポール・コンロイ。突然トラックが襲われ目が覚めると、そこは土の重さがのしかかる閉ざされた箱の中だった。手元にあるのは充電切れ間近の携帯電話とライター、ナイフ、ペンのみ。電話で家族、警察、FBIに連絡するが埒があかない。さらに、箱の裂け目から砂が入り込んで来る状態に。果たして彼はそこから脱出できるのか? そして彼がそこに埋められた目的は?

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