2019年6月1日 [施川ユウキ映画コラム]

施川ユウキ映画コラム「全ての映画は、ながしかく」第136回 サスペリア

第136回「サスペリア」

とにかくすごい作品だった。元の『サスペリア』の記憶は朧気なのだけど、幼かった自分でも何となく理解できるポップさがあった気がする。バカっぽい映画ばかり観てる自分からすると、今作は高尚というか難解というか、よくわからないが故に、映画とかエンタメを超えて、理屈とかも超えて、ガチのやばい世界を覗き見てしまったような禍々しさを感じた。具体的なことを何も言えてないのだけど、無垢な子供がハードなAVをうっかり観てしまったような動揺を、言語化不能なまま伝えたくなる、そういう映画だ。
舞台は1977年冬のベルリン。アメリカから来た少女スージーは名門舞踏団マルコスのオーディションに合格し入団する。しかしその舞踏団には裏の顔があり、彼女は悪魔主義的な陰謀に巻き込まれていく…といった内容。

第二次大戦の傷跡が残る中、街ではドイツ赤軍がテロを起こしている。当時の時代背景が持つ社会的不安と、オカルト的狂気がひとつにつながっているようで、より生々しい恐怖を作品全体から感じた。
舞台になっているベルリンの寒々しい街並み、古めかしい館、セット、装飾、舞踏シーンの大胆な衣装やメイク、少女たちの肉体、エネルギッシュでインパクトあるコンテンポラリーダンス、どれも美しく、そしてとてつもなく不穏だ。
ホラー映画と言っても、長い上映時間の割にゴアシーンはそんなに多くない。しかしいちいち凄まじいので十分すぎるほど。序盤の鏡の部屋で全身がとんでもないことになってしまうシーン、こんな痛々しい残酷描写、かつて見たことないかもしれない。クライマックスの血みどろの宴は、血みどろ部分よりも、世界観そのものが後々夢に出てきそうなくらいおぞましく、トラウマものだった。
演技でいえば、振付師マダム・ブラン役のティルダ・スウィントンが、カリスマ感を見事に放っていてハマり役だ。実は3役やっていると後で知ったのだけど、驚くような役でそれもまた衝撃だった。

●監督:ルカ・グァダニーノ ●音楽:トム・ヨーク(レディオヘッド)
●出演:ダコタ・ジョンソン、ティルダ・スウィントン、ミア・ゴス、クロエ・グレース・モレッツ、ル
ッツ・エバースドルフ、ジェシカ・ハーパー 他 ●上映時間:152分 ●配給:ギャガ

【イントロダクション】
1977年、ベルリンを拠点とする世界的に有名な舞踊団<マルコス・ダンス・カンパニー>に入団するため、スージー・バニヨンは夢と希望を胸にアメリカからやってきた。オーディションでカリスマ振付師マダム・ブランの目に留まり、すぐに大事な演目のセンターに抜擢される。そんな中、彼女のまわりで不可解な出来事が頻発、ダンサーが次々と失踪を遂げる。やがて、舞踊団に隠された恐ろしい秘密が明らかになり、スージーの身にも危険が及んでいた――。

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