2010年12月1日 [施川ユウキ映画コラム]

施川ユウキ映画コラム「全ての映画は、ながしかく」第35回 インセプション

第35回「インセプション」

 本作「インセプション」は、感想を語る時、割と重大なネタバレを含めない訳にはいられない作品だ。公開されてしばらく経ってるはずなので、勝手に一部解禁して書いていこうと思います。

クリストファー・ノーランと言えば、哲学的問いをテーマに、見事なエンタメを作り上げるテクニカルな監督だが、今作もやたらややこしい話を全く退屈させずに、2時間半楽しませて頂いた。「現実なのか非現実なのか」とか、「自分の夢なのか他人の夢なのか」とか、「夢の階層や時間についてのルールはどうなってるのか」とか、逐一細かく解説してみろと言われたら難しいのだけど、決して混乱すること無く、何となく腑に落ちて劇場を後にすることができた。
 というのも、この映画は「難解な設定の中、複雑なミッションを、聞き慣れない肩書きを持ったメンバー達で成功させる、入り組んだ物語」がメインストーリーのように見えて、実はそうではない。飽くまで「ディカプリオ演じるコブが、亡き妻のトラウマを克服できるか」という個人的ドラマが、プロットの中心に置かれた作品だ。
 だから、SF的設定やミッションについて完全に把握しなくても、コブの苦悩に同調さえ出来れば、映画から振り落とされずに最後まで付いて行く事が出来る。他の登場人物については、活躍はするものの内面について深く掘り下げられる事は殆ど無い(ロバートは内面に入り込む作戦の対象なので例外ではあるが)。描かない事で、「コブの心の旅」という物語がぶれるのを避けているのだ。
(ここからラストのネタバレあります。)
 問題のラストについてだが、夢か現実か答えが出て無くて、観た人は誰もが気になる所だと思う。コブが妻におこなった「これは現実ではないかもしれない」と思い込ませるインセプションを、観客自身に体験させる素晴らしい終わり方だ。一方、コブのトラウマ克服物語については、「子供達の顔をちゃんと見る」事でスッキリと回答を示している。モヤモヤを残しつつ腑に落ちる。ドラマに対してと言うより、ノーラン監督らしいテクニカルな作りに感動した。

●監督・脚本・製作:クリストファー・ノーラン ●出演:レオナルド・ディカプリオ、渡辺謙、ジョゼフ・ゴードン=レヴィット、マリオン・コティヤール、エレン・ペイジ、トム・ハーディー他 ●上映時間:148分 ●配給:ワーナー・ブラザース映画

【イントロダクション】
かつてない危険な時代。他人の頭の中に侵入して、形になる前のアイデアを盗むプロ集団が現れた。グループのリーダーはコブ。有能だが、ターゲットであるサイトーに気づかれるという失敗を犯してしまう。逃亡しようとしたコブの前にサイトーが立ちふさがり、実力を試していた事を告げ「インセプション」を依頼する。それは、ライバル企業の後継者に会社を潰すアイデアを植えつけるという極めて困難なミッションだった。
© 2010 Warner Bros. Entertainment Inc.

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