2019年3月1日 [施川ユウキ映画コラム]

施川ユウキ映画コラム「全ての映画は、ながしかく」第133回 アンダー・ザ・シルバーレイク

第133回「アンダー・ザ・シルバーレイク」

世界的ヒットした『イット・フォローズ』。ホラー映画であり、青春映画であり、純粋一途な恋愛映画の傑作だ。一昨年に自分が観た映画の中で、一番に挙げて良いくらい好きな作品だったりする。そんなデヴィッド・ロバート・ミッチェル監督の新作が、今回の『アンダー・ザ・シルバーレイク』だ。
前作のような、わかりやすくエモい話を期待していくと完全に肩透かしを食らう。不穏で意味深で難解で、作家性の強いカルト的作品になっている。

主人公サムは、夢の都LAで仕事も無く「失敗バージョンの人生を生きている気がする」と思いながら自堕落に暮らしている。ある日謎の美女サラと出会い、翌日再び会う約束をするも、彼女は姿を消してしまう。謎と陰謀に満ちたハリウッドで、彼女を探し回るのがメインストーリーだ。
現実なのか妄想なのか奇怪な世界に迷い込み、音楽や映画や同人誌やゲーム等ポップカルチャーに、世界の秘密を解く暗号を見出しながら、彼は陰謀論にのめりこんでいく。LAで何者にもなれない主人公の現実逃避のような物語にも見えた。冒険の間に挟み込まれる家賃の催促。そこだけがリアルな危機なのに、彼はその問題に対しては最後まで全く対処しようとせず、ひたすら妄想じみた暗号を解き、妄想じみた黒幕と会って、妄想じみた真実を知る。この映画は悪夢版『ラ・ラ・ランド』と言われてるそうで、正にそんな感じだった。
ヒッチコック作品へのオマージュをはじめ、映画や音楽への愛憎が爆発しているので、詳しい人はより一層楽しめると思う。自分は正直、知識が足りないので所々もどかしく感じたのだけど、マリオやゼルダの伝説が出てきた時は、テンションが上がってしまった。デヴィッド・リンチ『マルホランド・ドライブ』や、最近だと『ネオン・デーモン』のようなLA舞台の妖しい奇譚ものが好きな人にはオススメ。決して万人向けではないので、デートムービーには選ばない方が無難です。

●監督:デヴィッド・ロバート・ミッチェル
●出演:アンドリュー・ガーフィールド、ライリー・キーオ 他
●上映時間:140分 ●配給:GAGA

【イントロダクション】
大物になる夢を抱いて、L.A.のシルバーレイクへ出てきたはずが、仕事もなく家賃まで滞納しているサム。ある日、向かいに越してきた美女サラにひと目惚れするが、彼女は忽然と消えてしまう。サムは彼女の部屋の壁に書かれた奇妙な記号を見つけ、陰謀の匂いをかぎ取る。折しも世間では、富豪や映画プロデューサーの失踪や謎の死が続き、真夜中になると犬殺しが出没し、街を操る謎の裏組織の存在が噂されていた。都市伝説や陰謀論を信じるサムは、シルバーレイクの下に蠢く闇へと迫ろうとするが―。

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