2018年11月1日 [施川ユウキ映画コラム]

施川ユウキ映画コラム「全ての映画は、ながしかく」第129回 バトル・オブ・ザ・セクシーズ

第129回「バトル・オブ・ザ・セクシーズ」

女子テニスの世界チャンピオンのビリー・ジーン・キングと、元男子チャンピオンのボビー・リッグスが、1973年に実際に闘った男VS女の試合を映画化したのが、本作『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』だ。タイトルから、エロティックな映画を想像してしまいそうだけど、セクシーズは性差という意味らしい。性差別という深刻になりがちなテーマを、コメディタッチで軽やかに描いていて、去年話題になった、NASAの女性スタッフを描いた『ドリーム』を彷彿とさせられる。

主演はエマ・ストーン。黒髪にメガネで化粧っ気のない地味っ子アスリートキャラを見事に演じていて、『ラ・ラ・ランド』とのギャップに驚かされた。テニス経験が一切ないエマ・ストーンは、4ヵ月の特訓で7キロの筋肉をつけた。7キロの筋肉。衝撃的だ。『ボーン』シリーズでマット・デイモンについたトレーナーに鍛えられたという。ボビー役のスティーブ・カレルも素晴らしい。映画のラストでボビー本人の写真が映された時、ほぼ同一人物に見えた。
男性優位主義者ボビーは、女性の敵として過激な差別発言やパフォーマンスでビリーを挑発しまくる。55歳でヌードになったり、女装してテニスしたり、彼は差別主義者というより盛り上げ上手なヒールであり、ゆかいなピエロにも見える。ダメ男でありつつも、割と好感が持てる人物としてキャラ付けされていて、女子テニスを不当に扱う全米テニス協会こそが敵として描かれている。
独立し立ち上げた女子テニス協会のスポンサーがフィリップモリス社で、みんなでバージニアスリムを吸ったり、空港で、硬貨投入式の小さいブラウン管テレビを囲んで仲間の試合の応援をしたり、ファッション含め、70年代を感じさせる場面が印象深い。特に全世界で九千万人が視聴したというクライマックスの試合は、テレビ中継を見てるようなカメラワークを多用し、当時の雰囲気を生々しく感じられて良かった。

●監督:バレリー・ファリス、ジョナサン・デイトン
●出演:エマ・ストーン、スティーブ・カレル、アンドレア・ライズボロー、サラ・シルバーマン 他
●上映時間:122分 ●配給:20世紀フォックス映画

【イントロダクション】
1973年、男女格差の激しかった時代。女子テニスチャンピオンのビリー・ジーン・キングは怒りに燃えていた。女子の優勝賞金が、男子の1/8だったのだ。彼女が仲間と“女子テニス協会”を立ち上げるとそこへ、かつての世界王者ボビー・リッグスから「対決だ! 男性至上主義のブタ対フェミニスト!」と挑戦状が届く。ギャンブル癖のせいで夫婦仲が危機を迎えていたボビーは、この試合で再び脚光を浴びて、妻の愛も取り戻したいと考えたのだ。世界中の男女を巻き込む、男対女の戦いが始まった――。

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