2018年8月1日 [施川ユウキ映画コラム]

施川ユウキ映画コラム「全ての映画は、ながしかく」第126回 君の名前で僕を呼んで

第126回「君の名前で僕を呼んで」

17歳の少年エリオと、父が招いた大学院生のオリヴァー。北イタリアの避暑地を舞台に、美男子ふたりのひと夏の恋物語。同性愛を扱った作品ではあるものの、異性愛者である自分でも強く共感できたし、役者だけでなく風景の美しさや、ゆったりとした時間の流れに、いつまでも浸っていたくなるような作品だった。

ストーリーそのものは、ベタというかよくある恋愛話だ。展開はゆったりとしていて、二人の関係は進んでるのか進んでないのかよくわからない。キラキラした日常を描きつつ、繊細なやりとりが積み重ねられていく。どのカットも絵として美しく、そしてやたら二人の半裸が多い。湖や小さいプールでやたらひと泳ぎする。ピアノやギターで素敵な音楽を奏で、フルーツを食べながら知的な会話が交わされる。自然の景色と、彼らの過ごすヴィラを含め歴史のありそうな古い建物以外ほぼ出てこない。ロケーションの美しさを見てるだけで、「ここで暮らしたい…」とため息が出てしまう。
そんな日々の中で、二人の繊細な駆け引きが行われていくわけなのだけど、繊細過ぎて後半になるまでそこに恋愛的ニュアンスが含まれていることに気付けなかったくらいだ。そして主人公エリオが一世一代の告白をし、二人は結ばれる。驚くべきことに、この告白のシーンすら、言い回しが遠回しすぎて、「ん?今コクった?」と一瞬混乱してしまった。何という繊細さ。単に僕が鈍感なだけなのだろうけど。
エリオだけでなく、オリヴァーやエリオの家族、女友達、登場人物全員が良い人で、それもまた心地いい。特に終盤、傷ついたエリオに愛に満ちた言葉をかける父親、このシーンは思わず目頭が熱くなってしまった。
父親の場面に関して、作品資料にあったプロデューサーのコメントが印象的だ。「こんな言葉を聞いたことがある。“自分が若かった時、必要だった人間になれ”ってね。自分たちが若かった時には持ち得ず、でも必要だったような映画を作れたと思う」。
まさにそんな作品だった。

●監督:ルカ・グァダニーノ
●出演:ティモシー・シャラメ、アーミー・ハマー、マイケル・スタールバーグ、アミラ・カサール他
●上映時間:132分 ●配給:ファントム・フィルム

【イントロダクション】
1983年夏、北イタリアの避暑地にて、17歳のエリオはアメリカからやってきた24歳の大学院生オリヴァーと出会う。彼は大学教授の父の助手で、夏の間をエリオたち家族と暮らす。やがて激しく恋に落ちるふたり。しかし夏の終りが近づいた時…。

PAGE TOP