2018年6月1日 [施川ユウキ映画コラム]

施川ユウキ映画コラム「全ての映画は、ながしかく」第124回 RAW〜少女のめざめ〜

第124回「RAW〜少女のめざめ〜」

過保護に育てられたベジタリアンの少女ジュスティーヌが、飛び級で全寮制の獣医大学に入学し、様々な通過儀礼を経て自分に目覚めていく青春映画。目覚めるのが猟奇的欲望を持った自分なので、恐怖と不安と痛々しさにグッタリさせられる、直球のホラー映画にもなっている。若手女性監督らしい瑞々しさと類まれなる尖ったセンスに、すっかり圧倒されてしまった。

猟奇的要素よりも強く印象に残ったのは、大学のやたらとハジけた特殊なノリだ。ウェイ系テンションと中二的アバンギャルドさと軍隊的しごきが一体となった激しい世界観で、「こんな大学いやだー」と入学早々帰りたくなる。先輩たちがいきなりズカズカ部屋に入ってきて荷物やマットレスを窓から放り投げたり、異常なテンションでどんちゃん騒ぎしたり、動物の血を浴びせかけたり、儀式としてウサギの腎臓を丸呑みさせたり。ショックを受けつつ巻き込まれていく過程が、無垢なジュスティーヌ目線でホラータッチに描かれていく。中でも映像的に面白かったのが、ペンキのくだりだ。部屋に入るとそれぞれ色んな色のペンキを全身にぶっかけられている新入生達が目に入る。次の瞬間自分も青いペンキをぶっかけられ、「黄色来い」と黄色の男子学生と小部屋に閉じ込められる。そして「緑になるまで出てくるな」と言われ、二人でくんずほぐれつするという。酷いノリだ。そんな生活の中、ベジタリアンの主人公がいつの間にか肉食になり、果ては…と展開していく。映画のテーマ的に、猟奇的展開は少女が無垢さを捨て大人の女性に変わっていくことへの、極端な隠喩として機能していると思うのだけど、肉体的精神的不安定さの表現が壮絶で、「思春期の女子、みんなこんなだったら大変だな!」と同情してしまった。 少女の成長を描いた繊細かつ大胆な青春ホラー映画で、若者にこそ観てほしい。自分が10代だったらより一層ガツンとやられるであろう、力強い作品だ。

●監督・脚本:ジュリア・デュクルノー
●出演:ギャランス・マリリエ、エラ・ルンプフ、ラバ・ナイト・ウフェラ 他
●上映時間:98分 ●配給:パルコ

【イントロダクション】
16歳のジュスティーヌは厳格なベジタリアンの獣医一家に育ち獣医学校に進学するが、新入生通過儀礼として生肉を食べることを強要される。人生で初めて肉を口にした彼女はその行為によって本性が露わになり、次第に変貌をとげていく…。少女の成長を通して“究極の愛”を描いた、新人女性監督による衝撃のデビュー作。

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