2018年3月1日 [施川ユウキ映画コラム]

施川ユウキ映画コラム「全ての映画は、ながしかく」第121回 ザ・サークル

第121回「ザ・サークル」

行き過ぎたSNS社会に警鐘を鳴らす近未来SF!…という前情報から、過剰に発達した管理社会の恐怖を描くディストピア映画かと思いきや、印象が少し違った。今すでに起こっている現実を、半歩進めて淡々と語っている。

“サークル”はフェイスブックやらグーグルやらをまとめたような巨大SNS企業だ。エマ・ワトソン演じるメイは、憧れの会社サークルに勤めることになった新人。トム・ハンクス演じるカリスマ経営者ベイリーの影響で、彼女はサークルの掲げる理念・思想にハマっていく…。「全てをオープンにし、あらゆる情報を共有することで嘘のない社会を実現する」というのがサークルの目指す未来だ。具体的に言うと、小型カメラをあらゆる場所に置き、人々が常に情報を発信し合い、プライバシーを無くしていくというのだ。恐怖の相互監視社会なのだけど、プレゼンの巧みさから、「これは現実に支持する人間もたくさんいるだろうし、起こりえる未来だし、もうすでに一部実現している」と思ってしまった。
興味深いのは、メイの実家がある田舎と社内コミュニティの対比だ。普通に考えれば田舎は閉鎖的な村社会で、最先端IT企業は自由で開放的な風土を持っていそうなのだけど、サークルの方がよっぽどムラ的なのだ。ニコニコしながら口では「自由」と言いながら、プライベート情報のシェアを強要してくる。サークルの目指す社会は、村社会を全世界規模に拡大することにあるのだ。典型的なディストピアだけど、そこに安心や幸福を感じる人も今の世の中は普通にいて、少数でないこともヒシヒシと感じるので、見ていてぞっとする。特に日本では「世間の目」が強い圧力として機能する「恥の文化」があったりするので、一層の現実的恐怖を感じてしまった。
映画としては結構地味で、大きなオチもないし、カリスマ経営者のキャラもあまり強くないのだけど、SNS社会について強く考えさせられる今日的な作品でした。

●監督&脚本:ジェームス・ポンソルト
●出演:エマ・ワトソン、トム・ハンクス、ジョン・ボイエガ、カレン・ギラン、エラ・コルトレーン 他
●上映時間:110分 ●配給:ギャガ

【イントロダクション】
世界No.1のシェアを誇る超巨大SNS企業<サークル>。憧れの企業に採用された新人のメイ(エマ・ワトソン)は、ある事件をきっかけに、カリスマ経営者のベイリー(トム・ハンクス)の目に留まり、<サークル>の開発した超小型カメラによる新サービス<シーチェンジ>のモデルケースに大抜擢される。自らの24時間をカメラの前に公開したメイは、瞬く間に1000万人超のフォロワーを得てアイドル的な存在になるのだが―――。

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