2017年12月1日 [施川ユウキ映画コラム]

施川ユウキ映画コラム「全ての映画は、ながしかく」第118回 エル ELLE

第118回「エル ELLE」

ヴァーホーヴェン監督作品を最初に観たのは『トータル・リコール』だ。おばさんの顔が割れて中からシュワルツェネッガーが出てくる例のシーンを子供の頃CMで見て、親に映画館へ連れて行ってもらった。いきなりベッドシーンから始まり(今見ると大してエロくない)気まずくなった思い出がある。エログロや皮肉に満ちたブラックジョーク等、人を選ぶ作風ではあるのだけど、メジャー作でもある『ロボコップ』辺りは、全人類に見て欲しいと思っている。
とは言え、ハリウッドを離れて以降この十数年は、ファンとしての熱も若干冷めてしまっていた。今作『エル ELLE』は久々にスクリーンで観たヴァーホーヴェン映画だ。そして昔と変わらず、鑑賞後強烈なインパクトを自分の中に残している。

主人公ミシェルが覆面男にレイプされているシーンから、映画は始まる。犯人が逃げ去ると、彼女は警察に電話するでもなく、部屋を片付け風呂に入り、寿司の出前を取って、訪ねてきた息子と食事をする。ちなみにミシェルは60代でありながら色気たっぷりの美女(演じるイザベル・ユペールは64歳)だ。翌日、自分が社長を務めるゲーム会社に出勤して仕事をこなし、防犯グッズを買って帰る。トラブルに冷静に対処しひとりで解決しようとする。そうやって人生を勝ち抜いてきた女性なのだろう。この映画は、そんな彼女がレイプ犯を探しながら日常のゴタゴタとも戦うブラックコメディだ。
なぜそんな強く生きなくてはならないのか、壮絶な理由が後に明らかになり、その後犯人もわかるのだけど、物語はそこから超展開する。ネタバレになるから書けないが、作品を観た批評家やフェミニスト達から賛否両論を巻き起こしているらしい。とにかく強い女性の映画だ。不謹慎な内容かもしれないが、軽薄な作品ではないので多くの人に見てもらいたい。そして本作をキッカケにヴァーホーヴェン監督の他作品もと、ファンのひとりとして思うのだ。

●監督:ポール・ヴァーホーヴェン
●出演:イザベル・ユペール/ロラン・ラフィット/アンヌ・コンシニ/シャルル・ベルリング/ヴィルジニー・エフィラ 他
●上映時間:131分 ●配給:ギャガ

【イントロダクション】
新鋭ゲーム会社の社長を務めるミシェルは、一人暮らしの瀟洒な自宅で覆面の男に襲われる。その後も、送り主不明の嫌がらせのメールが届き、誰かが留守中に侵入した形跡が残される。自分の生活リズムを把握しているかのような犯行に、周囲を怪しむミシェル。父親にまつわる過去の衝撃的な事件から、警察に関わりたくない彼女は、自ら犯人を探し始める。だが、次第に明かされていくのは、事件の真相よりも恐ろしいミシェルの本性だった──。

PAGE TOP