2017年10月1日 [施川ユウキ映画コラム]

施川ユウキ映画コラム「全ての映画は、ながしかく」第116回 ハクソー・リッジ

第116回「ハクソー・リッジ」

『パッション』『アポカリプト』と、残酷描写に定評のあるメル・ギブソン監督の戦争映画。戦場の地獄絵図感が予告からも伝わってくるし、アカデミー賞も二部門獲ったりしているし、観る前から名作っぷりは保証済みだ。実際、ショッキング映像を期待して観てみると、グロテスクなシーンはもちろん多いのだけど、戦場へ行く前の前半部分も含め、始まりから終わりまで物語として見応えありまくりの力強い作品だった。

宗教的理由から銃を持てない主人公デズモンドが、衛生兵として沖縄戦最前線で活躍する。実話を元にしたすごい話だ。銃を持てない軍人というのがいかにありえないことなのか、前半部分でたっぷりと描かれる。彼は入隊した先でイジメに遭うばかりか、軍法会議にまでかけられる。「銃も持てないのになぜ志願した?!」と責められまくるし、僕もそう思ったし、どんな目にあっても信念を貫く姿は、尊いというより滑稽だ。共に戦わねばならない兵士からすれば迷惑だし、ほとんど狂人にすら見える。
何とか衛生兵として認められ、赴いた先が激戦地ハクソーリッジ。初めての戦場の緊張感、静けさの中で徐々に不穏さが高まって突如始まる凄惨な戦闘、この辺りの演出は流石だ。死体の山が築かれ、衛生兵として役立とうにもほとんど焼け石に水。あまりの地獄っぷりに、見ながら「いやいやいや、どうしろと」と笑ってしまった。そんな中、何とか役目を全うしようと奮闘するデズモンド。一時撤退した際置き去りにされた負傷兵達を、夜通し命がけで救い出す。「ワンモア(もうひとり)、ワンモア(もうひとり)」と神に祈りながら敵兵までも救おうとする姿に、胸を打たれた。
ただの変わり者に見えた主人公に感情移入していくきっかけが、なぜ銃を持たないのか語る場面だ。盲目的な信仰心からではなく、過去の事件が大きな動機になっている。
厄介者だった彼は、結果英雄となる。とにかく信念を貫くことについて考えさせられる熱い映画だった。

●監督:メル・ギブソン
●出演:アンドリュー・ガーフィールド/サム・ワーシントン/ルーク・ブレイシー/テリーサ・パーマー/ヒューゴ・ウィーヴィング/レイチェル・グリフィス/ヴィンス・ヴォーン 他
●上映時間:139分
●配給:キノフィルムズ

【イントロダクション】
人を殺してはならないという宗教的信念を持つデズモンドは、軍隊でもその意志を貫こうとし軍法会議にかけられてしまう。妻や父に助けられ、武器を持たずに戦場へ行くことを許可された彼は、激戦地・沖縄の断崖絶壁「ハクソー・リッジ」での戦闘に衛生兵として参加。敵兵たちの捨て身の攻撃に味方は一時撤退を余儀なくされるが、負傷した仲間たちが取り残されるのを見たデズモンドは、たったひとりで戦場に留まり、敵味方の分け隔てなく治療を施していく――。第2次世界大戦の沖縄戦で75人の命を救った米軍衛生兵デズモンド・ドスの実話を映画化した話題作。

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