2017年9月1日 [施川ユウキ映画コラム]

施川ユウキ映画コラム「全ての映画は、ながしかく」第115回 夜は短し歩けよ乙女

第115回「夜は短し歩けよ乙女」

本作と同じく森見登美彦原作のTVアニメ『四畳半神話大系』と同じクリエイター陣が再集結と聞き、『四畳半~』ファンであり湯浅監督ファンでもある自分にとって、映画『夜は短し歩けよ乙女』は、期待値マックスで待ち望んだ映画化だ。
そんなハードル上げまくりで観た本作、見終わった直後の感想は「面白かった! けど、思ってた感じとちょっと違うな…」というものだった。アニメ『四畳半~』で顕著だった、早口でまくし立てる長セリフや、実写を多用したキレキレの演出等があまり見られず、全体的にマニア受けより一般受けを意識した印象だ。ストーリーが、かなり現実離れしたおとぎ話風なので、それに合わせてリアル寄りの演出や観客を混乱させかねない無駄セリフを削ったのかもしれない。

星野源演じる男子大学生”先輩”をはじめ、キャラクターはいずれも魅力的だ。中でもやはりヒロインである”黒髪の乙女”がとても可愛らしい。酒豪で、好奇心旺盛で、どこか危なっかしくて目が離せない。真っ直ぐずんずん歩いて行く彼女に片思いする”先輩”と同じ気持ちで、荒唐無稽な物語を気持ちよく追いかけていける。
原作では春夏秋冬の4つのエピソードだったのを、本作では一夜の物語に強引にまとめている。時間軸的に明らかに無理があるのだけど、その思い切りの良さが自分的には良かった。おとぎ話感がより強まり、一部に見られるご都合主義的な展開(作品内でも自己言及している)を割とすんなりと受け入れることができた。
この映画を思い返した時、”黒髪の乙女”のセリフでもあるように「夢のような不思議な一夜」として蘇ってくる。それは奇妙な物語のことではなく、むしろ時間感覚としての不思議体験であり、そのせいもあってかこの映画は、思い返す度記憶の中でどんどん良い作品になっていく。映画を見終わった直後は『四畳半~』の方が好きだったのだけど、今では両方同じくらい好きな作品になっている。

●監督:湯浅政明
●声の出演:星野 源/花澤香奈/神谷浩史/秋山竜次(ロバート)/中井和哉
●上映時間:95分
●配給:東宝映像事業部

【イントロダクション】
クラブの後輩である“黒髪の乙女”に思いを寄せる“先輩”は今日も『なるべく彼女の目にとまる』ようナカメ作戦を実行する。 春の先斗町、夏の古本市、秋の学園祭、そして冬が訪れて…。京都の街で、夏個性豊かな仲間達が次々に巻き起こす珍事件に巻き込まれながら、季節はどんどん過ぎてゆく。外堀を埋めることしかできない“先輩”の思いはどこへ向かうのか!?

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